- C 1157話 凶悪なエルフが出たぞ! 2 -
わたし自身、マルからの特訓を受け。
立射、膝撃ち、伏せ撃ちの授業でみっちり教え込まれた。
もう、学校のことも忘れるほどに非現実的な常識ばかり刷り込まれた気分。
それが、先の農民クラン全滅へつながる。
逃げ回るプレイヤーは、膝を突いて安定させてから射撃した。
最低でも2発、2発以内で仕留めて制圧する。
目撃者は残してもいい。
先ずはこの場から抵抗力を削ぐ必要があるから。
次に命乞いをするプレイヤー。
これも射殺する。
背後を見せたとたんに豹変する可能性があるから。
ふふ、我ながら完璧。
だと、思ってた時がありました。
「はい、正座」
わたしの星座は獅子ですね。
「星座は聞いてません。天ちゃんはバツとしてトイレ掃除です!!」
なんでー。
◇
新経済圏のチームと協議した結果。
これのみを麾下の隊員たちへ伝えるのが、マル。
「当初、浜辺に上陸したまでのボクたちは、システム外からの招かざる客で。恐らく便宜上、プレイヤーとして認識できるよう配慮されてたものと思われる」
配慮、誰から?
そりゃ、システムだろう。
運命の三女神と呼ばれている管理AIが冒険者認識だった。
と、考えるのがしっくりくるからだけど。
突如として...
システムは、わたしらをダークエルフにした。
「システムの機嫌を損ねた事象は探れない。よってこの際、これ以上最悪になることはないと考える」
その結論はどういう?
「天ちゃんはアヴァロンのサイトを読んで、お願い。ダークエルフはこの島の原住民のひとつ。友好的な獣人族や、魔族と比較すると極めて好戦的すぎる。まさにモブ・オブ・モブ!! 本来、亜人族は人種族に友好的な印象だけども、ここでは逆転している」
蒼も激しく頷いてて。
「蒼もドワーフに声掛けたら、問答無用で攻撃された!!」
ゲーム内の話だな。
「ダークエルフ以外で、ドワーフにされるケースならもう、報告されていると思う」
掲示板に挙がるのはエルフばかり。
マルの言葉は、
「もっとも、ドワーフとエルフを並べたら、貧弱そうなイメージのあるエルフが」
ある種の罰だろう。
不正にアクセスしてきたペナルティ。
ゲームに貢献したら。
「いんや、不正ログインを重ねている時点でソレは期待できない。物理的に存在する島に上陸したら、非現実な世界と繋がってたを言い訳にするには... 流石にAIでも納得はしないだろう。我々でさえ適切と言える言葉が出てこないんだ、どう説得するかだが」
ま、怒らせる必要もないって結論が伝えられる。
システムがロールとしてダークエルフに堕とした。
再上陸を繰り返すであろう合衆国と国連軍は、上陸した時点でダークエルフになる。
「じゃ、じゃあ、警告しないと!」
マルの表情が硬い。
「もうヤった。第一陣と二陣とでは氏族の違いで、コミュニケーションが取れないってゲーム判定が為された。検閲が掛かるようでメールもメッセージも飛ばせなくなった。むしろ強行しないで、今ある交流できる仲間を大切にすべきだって意見がまとめられた」
マルに強行する主導権はない。
彼女はアドバイザーくらいなポジションなのだろう。