- C 1155話 騎士を拾ったはなし 5 -
迷子の騎士“ガウェイン”卿は唯一の遭遇者から、唯一の撃退者に称号が変化してた。
「――それで、好戦的なエルフだけど?」
何度目かの尋問。
本人は食事さえ与えておけば、饒舌になんども同じ話を聞かせてくれた。
これが凄いことに初期からひとつも誇張とか、調子のいい膨らませた文言が混じらない。
伝言ゲームでも聞き間違いや、思い出す過程でバイアスが掛かるものだが。
「うむ。ひとつの意思を感じられ、よく訓練された軍隊の様だったな。わたしの教え子たちも組体操などで一糸乱れぬよう練習を重ねているものだけども... 遊び一つに真剣な者たちは凄いのだな」
感心して、ここで鼻息荒くなる。
テンプレかAIか。
こいつオートパイロットに入ってやがるな。
厨房に詰めるウナさんから、指揮所のハナさんへ憤慨のひとこと。
『飯が足りなくなるぞ!!!』
◇
国境から調査すべき西へ向かうまでは確かに。
ゲーム時間でふた月分の食糧が積み込まれた――国境の駐屯村では、金払いのいい乗客だったと備蓄してた倉庫の品、すべてが吐き出されて。再入荷や生産品の補充まで暫くかかりそうなもんだった。
「解せぬ」
ハナさんは、ウナさんの陣中見舞い。
厨房は彼女の戦場であるし、憩いの場だ。
朝食は趣味で作っているパンが良く売れるし、昼食は注文を受けてから作ってた。
午後三時はスイーツの特訓で。
夕方から深夜あたりは、適当に作ったもんに皆が群がった。
食糧庫には鍵が掛けられ出入りはない。
だが、食料の減りが激しい。
「解せぬ」
もういちど諄いようだが、ウナさんがハナさんに届くよう呟いた。
「分かってますって」
「何を?」
その解せぬの答えを。
「迷子の円卓の騎士ですよ。アレの喰いっぷりは並みの兵の倍は食べるでしょ? しかも、筋肉を育てるのだと言って鶏肉の消費量が異常ですし」
拾ったツケだ。
情報源として有益だけどそろそろ噛み飽きたところか。
「味のなくなったジャーキーみたいなことを言うな」
拾ったのだ、棄てるような。
「不法投棄なんてしませんが、アレが聖櫃騎士団と繋ぎを付けてくれるなら未だ、利用価値はあるんですよ。(なんなら目的も知りたいところだが)今、離席しちゃってて、本人がINするのを待つ他ないです」
NPC化しているから飯を食わないことはない。
AIがトレースしたものを学習して、オートパイロット時に出力しているので。
食事も個性として引き継いでる可能性がある。
オートパイロットは一時離席に効果的だけど。
しばらくINできない場合には不向きだ。
AIにとってはプレイヤーの代わりに、プレイヤーとして振舞っているので。
違いに分からなかったらパーティに誘ってしまう可能性もある。
「こいつの場合は喰うことが第一になるようだが」
ハナさんも言い方。