- C 1150話 蒼と薄い本のはなし 5 -
アンダーグラウンドでも同人誌即売会が行われている。
というか、地上のコミケがメインで、領空の巨大な飛行船はVIP専用の規制なし。
地下の方はさらにアダルティなのが出回ってて。
仮に年齢制限がるとすれば、だ。
領空の飛行船は18歳未満お断り。
地上の会場は全年齢に健全なテーマでおなしゃす。
地下のクラブは変態御用達――。
ってな括り方になる。
有害図書規制法ってのが本国で施行され、同人誌界隈、とくに叡智なる方面が死にかけた。
いや、だから。
あるいは本当に叡智が結集されて、地下に逃げ込んだ。
薄い本は今も尚、体制に抗い続けている。
◇
「いいはなしにまとめてくれたようだけど?」
ん。
マルが余所行きの姿にある。
お出かけかな?
「この地下街にもマーケットはあるんだよ」
はいはい。
「で、そこに夏休みのはじめと、最終日に同人誌即売会があるんだ!」
ほー。
「売り子として蒼に呼ばれたんだけど。こんな普段着でいいんかなってはなしで、天ちゃんの意見をプリーズする!!! ボクにはどんな恰好が似合うと思う?」
おお、なるほど。
売り子ですか、売り、、、、え!?
「あん?」
俄かに怪訝な。
いや、疑ってるというより怒りに満ちたような。
ここはご機嫌斜めにならんよに。
いやだ、行きたくないって言葉が出たら、わたしのあたしが危険に晒される。
そうですね。
と、相談に乗るつもりで。
蒼から事前に何点かのコスプレ衣装が用意されてた。
では彼女のチョイス。
赤いランドセル。
怒らせる気満々かな?
紺地に伸縮性のあるワンピースの不思議な水着。
旧時代の決戦兵器だ。
ある意味と言うか、ある趣味の人たちに絶大な効果を発揮する――ランドセルに、スク水、ニーハイで上履き姿を装備したマルは無敵だろうねって、蒼は無邪気にも笑ってたけど。それを着せようとする、わたしの苦労は報われるのだろうか。
「これは、あれだ。スク水だって言うんだろ。エサちゃんがこの間の潜水艦乗りにおいて、セーラーシャツの下に来てたと思うんだけど?」
一見すると新品のように思える。
胸元のゼッケンには、マルって書かれてて。
おお、本格的に油性マジックだ。
「でも、すんすん」
なんか嗅いでるようだが。
わたしも嗅いだけど、伸縮する生地のポリかゴムっぽいのしか感じられなかったな。
「エサちゃんの匂いがする」
「そんな、まさか!!?」
そうだよ。
物理的にあの巨乳が収まるわけがない。
いやそこじゃないな。
ケツもおっぱい同様に丸みを帯びてて、肉付もいいし、ありゃあ安産型だよ。
間違いない。
「スク水は着させたいようだね?」
お、おっとぉ。
こりゃ、反論したことで意図が読まれたかな。
第二のプランは。
黄色い帽子に、画伯を思わせるようなブラウスと、スカートだ。
短い丈ではあるけど。
マルの座高と身長からすれば、前屈みでもそうそう見えはしない。
「ふぅ~ん」
あー、なんか突き刺さるジト目が。
別に他意も無いのに痛すぎる。
「ボク、高校生なんだけどね?」
そのギャップが萌えるんですよ。
「天ちゃんはどんな恰好するの?!」
は。
え、ええ、えええええ?!!!
なんで。
「ボクだけの筈がない」
蒼からは侍女長が着てた片葉宗家の侍女たちがどんな恰好をしているのか見てみたいって――依頼だった。わたしの本家は凄く古風で、西洋のではなく...
割烹着のような大正ロマンのような。
モンペ・ズボンは可愛らしい。
肌の露出は腕まくり程度で、暑かろうが、寒かろうとも。
なんか一緒な姿だったなあと。
「ず~る~いぃ~」
ズル、い?
「うん。ズルいじゃんよ。ボクなんかエロい目で見られるじゃん?」
スク水は間違いなく。
「ほ~ら~ ボクもモンペ・ズボンのメイドさんがやりた~い!!!!」
其処は蒼の判断なようなきがするし。