- C 1142話 国連軍と大規模戦闘 2 -
浜辺に陣取ってた国連軍――合衆国主体の常任理事国たち、とでも言い換えるか。
きわめて高い戦力で固められていた『悪意』だが。
結論から言うと、攻撃の的に遭っていた。
勿論、戦略上花形とされる。
ネスミ突――間断なく敷き詰められたレーダー網にも死角となる隙間があって、これを経験と野性的勘で搔い潜ってきた猛者による拠点強襲の態や、技、戦略的行動をゲーマーの間では『ネズミ』という。
まあ、もっともこっそりチーズを掠め取る行為ともいえるんだけど。
度胸が無いと、なかなか。
理屈では、間断の隙間なく配置された目から逃れられない。
ただ総じて見ているのは人だ。
AIだったとしてもミスはある。
そのエラーを彼らは利用している、いあ、利用した。
◇
移動要塞として陸上戦艦が高価で、重武装で、高耐久なのは。
ネズミ突から司令部を守る為だ。
大規模戦闘が開催されると、指揮所として巨大な陸上戦艦がポップする。
攻撃対象であり、守備目標でもある。
クランで所有する何十倍も大きな要塞だけど、鈍いのがなあ。
難点と言うか、弱点?
『右翼、弾幕が薄い!! もっと集中火力を!!!!』
左翼は本国の日本軍が受け持ち、統率の取れた凶悪な弾幕が敷かれてた。
速度重視のフレームなのだろう。
弾幕に飛び込んですぐに離脱している。
機影は5。
どれもが俊敏で戦車が置物か文鎮になってた。
「っ、邪魔だ! どかせ、エイブラムス!!!」
死角も作ってるし。
25ミリの放った弾丸を不規則な方向へ弾き飛ばしもしてた。
追尾しながら射撃している射線に戦車が入ってたという。
それほどトリッキーに敵機が動き回ってるんだけど。
戦車兵からは、
「動けるもんなら動いてる!!」
怒気交じりの返信。
仲間に撃たれる複雑な心境。
ドキッとはするけど、次に来るのはイラっとする感情。
ただ、敵機。
エネミーコールされた5体の人型鎧のソレは、未だに攻撃していない。
急接近してきたから自衛のために威嚇攻撃から始まったものだけども、時々、銃口は向けてくる。
すぐに躊躇うような間をもって敵意が消えた感じがして。
「何を狙ってるんだ?!」
橋頭保から洋上へ短い電信が飛ぶ。
相互の状況と兵力の投入は入り江まで入り込んでいる強襲揚陸艦と共有していた。
弾薬が足りなくなれば、メシや人員は揚陸艦から調達している。
「ま、まさか?」
詰める将校たちの目に飛び込む無線機。
その先に洋上の揚陸艦と重なる瞬間――船が、爆発炎上した。
敵機は、攻める相手を決めかねてた。
貧弱な防御の砦か、或いは洋上に浮かぶ船か。
陸上では威力減衰が起きにくい魔法も、洋上では射程も含めて届くか心もとなくなる。
攻撃するなら5体すべての火力が必要不可欠と考えてたのだ。
「やられた」
2隻目が投入されるまでに、橋頭保は失われる。
国連軍第一陣主力は、こうして壊滅した。