- C 1139話 戦災孤児をひろいました 4 -
灰色の尖塔。
今は単なる廃墟だけど。
ここは穴場スポットで、エリア全体がダンジョンと化している。
普通に潜るだけでもフレームの素材が手に入るし。
強化パーツや、新しい魔導書なんかも手に入る。
とにかく魅力的なスポットではあるけど。
PKも多い。
PK同士では紳士協定ってのがあるらしく。
都合上、潰しあいはしないそうだ。
なぜかは分からない。
シリアルキラー予備軍っぽいのに。
フィールドに出ればほとんどの地域が、PKし放題のエリアであって。
それはプレイヤーキラーをしている者も例外なく狩られる側という意味でもある。
子羊のように農民プレイに慣れているのが、日本人気質で。
かつて、SNS上には多くのPvPソシャゲがあった。
そのすべてにおいて。
スイミーのように大きな群れを獲得して『農民プレイ実施中』ってグループの紹介文に書き記していたものだ。
とはいえ、日本人だからの理由で。
PKに無縁かと言うと、それも怪しく――やっぱり一定以上は積極的にPKになる者と。
流れた先でPKになってた者とで別れるくらい、か。
ま、いずれにせよ。
PKも出来るフィールド上の採掘現場やダンジョンでは、極めて珍しいフレームの素材などが手に入る。
いあ、そうだなあ。
安全圏である地域も点在し、そこまでどうやって行くかが問題だけど。
仮にそうしたセーフティ・エリアの採掘場でも。
NPCのエネミーを相手にドロップアイテムで稼ぐ手段は残されている。
ただし相当に確率に振られ、絞られた値の中でしかドロップしないのが決まりだった。
課金で得たフレームも強化する時にはゲーム内に点在し、埋没しているアイテムが必要になる。
いや、開拓街の露店、中堅の店、クランが開いている交易所で手に入ることもあるんだけど、まあ、これが糞がつくほどの高価とくる。
この強化アイテムを買ったとしても、目当ての効果が出るのもガチャ要素だといったら。
これ絶対、発狂ものだと思うんだよ。
◇
“灰色の尖塔”に呼び出され、
PKたちが縄張りとするエリアまで引きずり込まれた形となった、が。
カエデのダズル迷彩を目撃したPKクランらは、
「俺たちは姐さん方に敵対しないですよ」
なんて言葉を残して早くも退散し。
尖塔エリアがグローバル・アナウンスで――『3時間だけの限定ですが、只今より“灰色の尖塔”はセーフティ・エリアに治安が格上げされました』って流れたようだ。これが公式に登録されたPKKクランの社会貢献である。
さて、待てど暮らせどMPKクラン『ジンギス飯』のメンバーが来ない。
そろそろ3時間が経過する時期になって。
ちょっと居座り過ぎたかもしれないけど。
再びアナウンスが流れて――『治安が更に浄化されて、延長されます』だって。
よくよく考えたら。
お尋ね者が急速に治安が良くなる地域に踏み入れるはずもなく。
尖塔の郊外へと流転した。
まあ、そんなスラムのようなより廃墟めいた地域で、飢えた目をした獣のような子に。
エサちゃんは、出会ったのである。