- C 1136話 戦災孤児をひろいました 1 -
さて、エサちゃんらの方。
なんか市街地に出ちゃったみたいで――猫の子でも拾うように。
「なんで連れてきちゃったかな?」
ハナさんの声に、諦めの境地のようなソレがあって。
ため息交じりに。
「だって、」
鳴いてたから。
小さな子を抱えるように、エサちゃんの腕の中に似たサイズの子がある。
抱えるというか負ぶさるというか。
◇
ことの起こりは2,3時間前に遡る。
開拓街のひとつで話題になった、クランの話。
MPKの常連を躊躇いもなく瞬殺した上に、最狂と謳われたティラノの群れも。
瞬く間に処理したという凶暴と弐つ名が贈られた無名のクラン。
今のところの情報としては、ここまでで。
仕入れてきたウナちゃんは、ハナさんに。
「これ、国連軍だよね?」
まあ、そうとしか思えない。
わたしらの上陸ポイントは、タイムラグはあってもリアルタイムにモニタリングされてた。
万が一にもすれ違っても。
このビーコンが互いを誤認から防いでくれるはずで。
「まあ、どう言う訳か、プレイヤーとして認識はされているようですね」
最初の疑問に立ち戻り、
「島はやっぱり実在してたのか?!」
「さあ、視覚的な信号が為せる集団催眠の類かもしれませんよ?」
光学センサーが用いられているのは間違いなくて。
メガフロートで建造された人工島に吸い寄せられただけとも。
「運営には確認したんでしょ?」
集団なんとかも検討くらいはした。
VRにARを駆使しているのではないか。
メリットがない。
当然、運営会社に。
リアルな、写真のような、或いはドキュメンタリー番組でも見ているかのような。
現実のようでまるで現実味が無い世界に迷い込んだ時。
サプライズとして何かを期待はするけど。
期待とともに恐怖も過る――だってそのエリアは、敵性勢力下だったりする。
乗り物にでも駆って、通り過ぎる分のペナルティはリスクとともに小さい。
「プログラムの出展が『ハイファンタジー・オンライン』ってだけで、なんとなく事件性と事故の他に、オカルトも感じられるから不思議だよ。別の世界線でもあのゲームに巻き込まれたんじゃないかって」
――で、敵勢力下にほど近いであろう、海岸線に陸上戦艦が向かう事に。
これは突発性のライブ・クエストってヤツで。
基本的には調査目的なので占められ。
MPKクランの中堅プレイヤーから依頼が流れてきた。
集団レイドと同じように。
時限性のある高額報酬も見込めるライブ・クエストは人気のあるものだけど。
今回は流れそうな類のだった。
MPKしに行って返り討ちに遭遇ったのだ。
もはや自業自得って言葉で片付けられるのに。
「マルちゃんトコの上陸地点に近いから、物見も兼ねて受けてみようよ!!」
これはウナちゃんの言葉だが。
その一言がきっかけで――市街地へと入り込んでしまったのだ。