- C 1135話 そこは紛争地帯でした 5 -
誤認ではなく、認識。
NPCにMPKは通用しない。
そもそも論で拡大すると、
セーフティ・エリアから出てNPCがフィールドにリスポーンすることが無い。
この場合のNPCとは。
開拓を生業とする、植民地の住人たちで。
高く聳える城壁の向こう側で生活しているAIたちのことだ。
支配地域は島全体の4分の1未満。
街も点在しているとしても、未だ、みっつ程度しかない。
現在進行形で建設途中のものは勘定にはいれてない。
そうした街こそ、唯一のセーフティ・エリアだ。
その中でのPK行為はご法度だけど。
実のところ攻撃できない訳じゃない。
撃退された時のリスクが、フィールドよりも酷いって話だけだ。
何が?
そう、どんなリスクがあるのか。
死んでも居ないのにデスペナがひとつ点く。
レベルの後退、最大10ほど減点される。
次に、
レアリティの高い装備品のドロップ。
いやさもう、没収と言った方が聞こえがいい。
だって取り返せないもん。
これ、地味に痛い。
あ。
わたし、やってないよ。
安全圏PK。
PKKの友人との間で発生したお土産話の方。
「――認識していた?!」
ティラノはこの穴ぼこのある地より、更に奥から連れてこられたものと分かる。
マル曰く。
いや、彼女を通さなくても、わたしでもわかる。
この巨大トカゲ野郎は、もっと森のあるトコでリスポーンしている。
禿山にされた丘陵地は、だ。
先週か、先々週の大規模な装甲列車防衛線の名残なのだから。
◇
不定期に行われる突発的なレイド戦。
先週か先々週のイベントは、無条件受注が出来るPvPvEのレイド戦だった。
人類側は装甲列車を守り、それ以外の勢力が列車を襲う。
構図は至極単純な攻防。
守備側が不利なイベントなんだけど。
守り抜くと防衛サイドの参加者にエピック級のアイテムが配布される仕組みだった。
勿論。
攻撃側も美味しくないと狙わなくなる。
レアリティなアイテムは手に入らないけど、入手難易度が緩和されたルートボックスが配布されるという。
10個とか、20個とか。
ま、まあ。
その時の爪痕がフィールド上に多く残されてて。
この浜辺も、装甲列車にガン積みされてたロケット弾によってすっかり禿げちゃったという。
ま、18両もあった車両のうち、2、3両がこの丘陵の奥に転がってる筈である。
「ボクたちが上陸してたのを見てたから、ティラノを差し向けたとみていいかもね」
なんで?
この問いは野暮かもしれない。
「なんで、か。そりゃ、戦利品を漁ってたからじゃないかな? 装甲列車の貨物部分が転がってるんだ。当然、イベントを見送った連中は楽して儲けたいと思うからね。彼らの目には、別ルートから来た同業者に見えてたと思うよ」
あくまでも島の外から来た認識が無いという。
あるいは戦車なんかが小型の陸上戦艦に見えた可能性。
「そういう事はあると思う。開拓街の文化レベルが1世紀、いや2~3世紀前なのは単に演出でしかないけど。オーバーテクノロジーな強化外骨格が現代のちょい先っぽく見せてる。このアンバランスがあるから浪漫がウケてるんだよね」
ま、わたしにはその浪漫は分からない。
ゲーム中のフレームは初期配布モデルのままで、塗装だけはハナカマキリみたいのにした。
いあ。
塗って貰った気がする。