- C 1132話 そこは紛争地帯でした 2 -
腕を振っている現地人の後方に。
濛々と土煙を挙げるティラノサウルスの――群れ?!
孤高の一匹オオカミ的な竜種だというのが定説だけど。
いあ、違うな。
腕を振る男の後ろに、泣き叫ぶ恐竜の子がある。
高空にあったオスプレイから、
『撃つなあー!!!』
って無線が流れたけど。
それは少し遅かった――地上の現場指揮官は、情報源にもなるだろう現地人救出のために。
『撃て!』
を強行したのであった。
◇
いわゆる。
これがリアルなMPKという行為だ。
PvPvEが成立するゲームシステムにおいて、タゲの刷り込み直しは簡単だ。
上書きしてやればいい。
オープンワールドやフィールド間がシームレスになると、リスポーンするモンスターも、狩場を求めて移動することがある。そういう自由度やリアル性が追及されたから、簡単なレベリングでコンテンツが容易に消費されていく問題点の改善につながってた。
ただ、賛否両論はある。
狩場スポットが固定化されていれば、だ。
新規者が気軽に楽しめるだろうって意見。
わからなくもない。
ただ、これは前述した、時短で解決ができる。
納品クエストの時短といえば、お得なパック購入。
うーん、がめつい。
でも、このゲーム。
戦略性に戦術も加味されてるのよね。
脳筋でいたいなら止めしないけど、レベリングしながら自分の立ち位置、俯瞰して周囲の動きに気を配らないといけないんだわ。
――獲物の背中を追っていくような逞しさが、求められている。
さて。
わたしたちに竜種を擦り付けた現地人だが。
マルの狙撃により動けなくなって、ティラノに踏まれたところだ。
「いいの?! あれ」
そう。
現地人救出のための攻撃指令なのだから。
「問題ないよ、ヘリの連中が後で間に入ってくれる。今は、ゲーム内で竜種に効いた物理攻撃は何だったか思い出してる最中で――」
わたしに絡みたがる蒼が挙手。
あ、指一本、立ててらっしゃる。
「どうぞ?」
「外皮が分厚いから足元を狙ったらどうかな?」
正直、魔法の方が効果は高い。
物理攻撃の耐性があるモンスターで、各国ともにいささか混乱してるとこ。
合衆国はこれも想定しての戦車投入だってことは、まあ。
この事態ではっきり想定してたんだあ、と。
「グレネードか」
ちらっと、エイブラムスに視線が。
すでにMK5まで生産された主力戦車だけど。
今までの重戦車のようなイメージではない。
燃費が悪そうなイメージはある。
しゅぽぽ~ん...
頼りない音だと思う。
着弾すれば弾頭の成形炸薬が破裂して、辺りが高温と灼けるようなガスが発生して。
すぐに炎へと変わる。
おそらく地面が熱で表面だけでもドロッとしたものに変わるだろう。
そこへバランスが崩れた爬虫類に120ミリ砲が火を噴くといった流れになる。
しゅぽぽ~ん...
新経済圏の参加国が、グレネードの支援攻撃を行っている。
うーん踏まれちゃった現地人の身体も。
「この融解した地面の上では解けるか、あ、いや燃えてカスも残らないかもなあ」
そんな無責任な。