- C 1130話 そこは幻の島、アヴァロン 5 -
「このボットには、ひとつ仕掛けがある!」
上陸舟艇は3隻でている。
各国の方も似た数だし。
ボット運用国にも、同じ仕掛けを用意した。
訝しげな表情だったけど。
マルは参加国に対し、
『必要な装備品です』と、告げていた。
その仕掛けについて。
彼女の口から...
「ゲーム内に用意されていた強化外骨格を仕込んでおいた。ま、本来は機械仕掛けの装甲素材を魔法のような技術で、脱衣したり着衣したりするんだけど。医療用ボットに軍用モデルと同じ追加装甲として機能させられないか、試作したものを用意した。他者からは、視覚的にロボットに成ったように見えるだろう!!」
あ、それ。
出発前の言葉と矛盾させたんだね。
「え?」
マルも、大概にポンコツのようで。
◇
いあ。
前からか。
神学科に引っ越してきた時から。
何故か女性生徒には人気なんだけど、その百合っぽいとこで。
男装しているだけの“わんぱく”なボクっ子というイメージが刷りこまれてた。
何かのステレオタイプのような。
わたしの目には、ガキにし見えなかったんだよなあ。
まあ、そのギャップはシーンによって変わる。
プロゲーマーとして、活動する被り物芸人っぽい時は。
謎の人演出に磨きがかかり、掴みどころがない。
傭兵を指揮している時も...。
なんか、こう頼もしさがある。
ガッコのアイツは、頼りない。
「この場でも普段通りに頼りなかったら、預けてくれてる連中の命が、危険に晒されるじゃないか。メリハリをつける。緩急をつける、ON、OFFがある。どっちでもいいけど、ボクは天ちゃんや蒼のことも守らなきゃならないんだ!!」
かっこいいこと言ってくれたのは、心にしみた。
が、だ。
蒼がソレを台無しにした。
「でも、天しゃんの身体は水槽の中ですよね?」
あ。
マルを寂しげな眼でみてしまう、わたし。
「そうだよ、ボットで出撃したから身体に危険が及ぶことはないさ。そうさ、無いよ!! ボクが勝手にムーブして悦に入って、隊長ごっこしてるだけさ。ひぃーん!!!!」
拗ねちゃった。
この後、彼女は暫く使い物にならなくなった。
およそ経験豊富な歴戦の勇者が沈黙。
これが如何に恐ろしい事かは、上陸後に身をもって知ることになった――。
◇
時間合わせも含めた、一斉上陸作戦。
国連軍での実績ではあるけど、そこはやはり“合衆国”ってとこだね。
あっさりと主導権を掌握して総大将を気取ってるんだ。
しかも、戦車まで投下している始末。
合衆国はここに至るまでに多くの情報収集と、シミュレーションを重ねていて。
過剰でも逐次投入という愚考を侵さない腹積もりで臨んでいたってことだ。
マルが元に戻る前、
そう、拗ねて丸くなる前に。
『合衆国の海兵隊でも見つけたら、暫くは指揮下に入るといい。食客でも軒下に置いてもらって、見て学ぶんだ! そして生き残れ。きっと修羅場になるはずだから』
ちょっと怖いこと言うなあとは思ったんだよ。
この子には何が見えてるんだって。
そう、あの時は未だ、ね。
楽観的な感覚だったんだ。
大丈夫、何もないぞって。