- C 1127話 そこは幻の島、アヴァロン 2 -
本国を介して国連から呼びかけを行い、合衆国の提唱する『生贄作戦』に抵抗するよう。
各国にはとにかく自制を促してみたが。
今のところの反応では極東・アジア新経済圏の連中しか靡かなかった。
いあ、VRもAR先進国である例の大国が口利きをしてくれた結果、新経済圏だけ。
遠隔操作のメディックボット・プロジェクトが受け入れられたのだ。
もちろん、ドローン技術の提供はやむ無しなのだが。
ああ。
陸華堂家の猛抗議は当然あった。
なにせ、彼らの権利は白紙になるのだから。
それでも。
あんな得体のしれない島に、生身で行く勇気はない。
いや、人道的に許されるべきものでもない。
どんな状況、事態でも『いのち、だいじに』だ。
◇
「ぶっちゃけて陸華堂家が失うアドバンテージって」
わたしの問は。
マルが蒼を抑えて、
「各国とも似た研究はあって、大した損失にはならないと思うよ。まず、費用対効果で首を傾げるレベルだと思うし。陸華堂さんのアレさ、医療用でも自家用車ひとつ手に入れる感覚で買えちゃう価格設定って頭、イカレてるんじゃないの? 外見の素材と、中身の技術含めても...いや、これはやめておこうマニアック過ぎた」
マルは言いかけて。
唐突に諦めたように口を閉ざす。
スパーリング相手に複数体と戦って得た生の情報。
滑らかな関節と、強靭な骨格、それらを支える不思議な筋肉繊維群。
「じゃ、」
「当主代理殿は相当のお冠だったけども、細かい技術はすでに特許が受理されてるんで、パチもんが出回るようなくらいの被害しか受けないんじゃないかあ。これは個人的な楽観視ってやつで、実のところ軍事向けの方は未知数だね」
医療用とは言え、小隊分の個体はお買い上げされた。
そこから解析されて軍事転用の流れは言わずもがな。
「ナイフ4本使う、死神さんの故人データを基にAI貼り付けたら...」
舌先をぺろっと出したマル。
「軍事用のボットも格段にパワーアップすると思うよ?」
本心かどうかはわからないけど。
蒼自身は、マルとも死神とも戦って、勝てていないので納得はしているようだ。
「で、さあ」
コクーンの中へ潜り込もうとしている、マル。
大規模な道場のような空間に、ツタが這ってるような圧があって。
整然と並べられた繭型の機器が設置されてある。
この繭、プロジェクトに参加した国がすべて同じように動員しているという。
「島外の船には、スキンが掛かったボットが出陣を待っている状態だ」
ふむ。
「肉眼でも、また、光学式のバイザー越しにでも。他者からの認識は“メディックボット”ではなく、人間に見えている。ゆえに!! ここが重要だから、耳の穴をかっぽじって拝聴するように! 人間じゃない行動はしないように、以上」
装着っ。
そんな号令だった。
で、わたしはマルに尻を蹴られて、コクーンの中に放りこまれてた。
いつの間に後ろに回ってたかなんて。
いあ、なんか、ひどくなーい!!!! 扱いがー!!