- C 1126話 そこは幻の島、アヴァロン 1 -
準備期間に約1か月を費やした。
人工島も、いつの間にか北極海付近にまで寄って貰ってて。
この調査隊派遣がどこから来たものかを、窺い知れるものにしてた。
とは言うのも。
周辺海域に各国の海軍旗が双眼鏡越しに見えるほどの船団がある。
本国の護衛艦も見えるので。
「これ、マジもんの調査だったん?!」
わたしの第一声が間抜けな声というのも、じつにわたしらしい。
そんな残念な子の真横には。
こういう時は頼もしい仲間?
マルは腕を組み、
「ちょっと先越されたかも」
と、焦り気味だ。
蒼も後ろ手に組み、なんか腰がくねくね。
「蒼は天しゃんと渡れれば、何もなくていいです。無人島、浜辺で裸のうふふ、きゃははの砂まみれ...なんか、凄い響きですよね?」
いあ。
何、そんなのしないからね。
そういう調査隊じゃないし。
蒼は変な薬キメないよね?!
アレ!!?
これ頼もしい仲間なのか!!
わたしも腕を組んで、顎の先を摘まんで考えこんじゃった。
◇
北極海に浮かぶ島――
自分自身の目で見る行為も、カメラのレンズ越しに見る行為も。
どちらも観測する点でいえば光学式だ。
だから......
騙そうと思えば、騙せる。
わたしたちの目は精度のいい緻密な光学機器と同じなので、波長次第ならいくらでも騙せるんだけど。
そんな屁理屈をこねても、だ。
見るもんは、見えちゃったら。
人は調べなくてはならない。
形骸だと揶揄られた国連が、力ある国家群へ『――複数の衛星がキャッチした厚い雲の下から、未知の“島”が出現したことは、ご存知な方々もあるでしょう。国連としましては、最後のフロンティアとして人類共通の資産として、数十年ぶりですが『国連軍』でかの地の調査を本格的に行動したらどうでしょうか』と、呼びかけた。
時の事務総長は、だれだっけ。
何処出身の人ってのも覚えちゃいないけど。
合衆国が背後にあるのは間違いない。
このあたりの裏事情は、マルから聞いた。
◇
人工島の地下区域。
傭兵団が自前の隊員を訓練するのに使ってるという施設だと、あとで知った。
「厚い雲、べらぼうな質量の重力波が観測されたのは3か月前のこと。蒼と天ちゃんのご両人の爪が、やや深爪っぽくなった頃なんだけど。“アヴァロン・クエスト”でも、一部のプレイヤーからリアルな地形に遭遇したという目撃談がちらちら、フライングしたのは合衆国」
ごくりと喉が鳴る中。
わたしの爪と、
蒼の爪が、いあ、指が重なり合う。
よくよく見れば。
まあ、確かに爪が相当に丸くなってますね。
「特殊作戦群より、前哨歩兵の3個小隊を当該島へ送りこんだのが、はじまり...」
合衆国がヤらかしたのだろう。
「ここで詳しく知らないのは、天ちゃんと蒼だけだろうね。合衆国の作戦は結論から言うと、失敗したけど。大局的にみれば多くの犠牲がでたけども元手の回収はマズマズという反応だった」
結論から言うと、上陸は出来たけど――
送り込んだチームすべてを消息不明したという。
故に一部失敗して、一部成功したともいえるのだ。
「だから、生贄を用意した?!」
「察しがいいね。上陸するルートは確定しているから、島を護るように形成される磁場、重力の塊みたいな壁を抉じ開けるようなことはしない。ただ、問題があって――」
そのためのメディックボットってなわけだ。