- C 1125話 霧の向こうで 4 -
該当ゲームには職業を1ないし2個まで取得できる。
ただし成長させる職業は一つだけなので。
この職業選びにも実のところ、かなりの地雷って発想があった。
これのシステムが、
“ハイファンタジー・オンライン”が基になっているんだと思えば、マゾさがぐっと際立つ。
スキルの組み合わせも自由だ。
ただし、何でも取得することが出来る代わりに。
パッシブとアクティブの枠にセットできるコストや数には制限があった。
当然、最初から強力なスキルにカウントされるものは、発動しなくても再チャージで代が莫大にかかったり、積載過多でペナルティを負う。
「えー、マジ?!」
こういう声が出るのは、宇奈さんだ。
あなたゲームに向きませんよ。
戦略性と個性の戦いは。
メイキングの時点で始まっていると言えた。
◇
先ずは、漠然としたイメージでは詰みかねない戦略眼が必要で。
都度、修正が効く大局の視点と戦術的勘のようなものが求められる。
できれば、だ。
最初から尖っている方にするって、手合いの考え方も必要で。
これの罠が発動するのは。
中道タイプってこと。
わたしも流されるだけなら、その中道路線。
考えなくていい。
でも、さ。
結局のところ最後の最後の方で突きつけられるんだよ。
システムに振り回されるのがいいのか、自分で切り開くのがいいのかって。
結論に辿り着く前に。
大概の人は――辞める。
とにかく癪に触っているから、文句をしこたま残して辞めるのさ。
クソゲーだって言って。
「スキルのコストは、いくらかマシに出来る。最初から火力最大にしなければいいんだ」
呼んだ?ってお約束のように、マルの義姉・華さんが振り向いてた。
いあ、あれの目はマジか。
「スキルの成長具合では、実のところ攻略サイトでも。中火程度の攻撃スキル、初期装備の低コスト・スキルの方が後々に化ける可能性が示唆されてんだが、これがマゾでな」
またか。
十恵さんは、この攻略でも詰んでるっぽい。
10回試行して11回失敗できる人かもしれない。
ま、これも個性だと思う。
「――初期スキルの派生先はわりと多い。オーソドックスで、片剣術の武技をひとつ取得するとする。...あ、いや、どんな武器でも扱いたいなら剣術全般ってスキルはあるんだよ、あるんだけど。これが地雷でね」
半嗤いしてるから、これしくじったスキルだ。
細分化された技術と全部を網羅しているような兵法っぽいのがある。
それぞれに恐らくはいい事があるんだろう。
ちなみに、わたしのアバターは戦闘工作兵がメイン職業で。
サブを衛生兵にした。
救急箱や、支援物資を橋頭保になりうる地点に隠して、収納しておく能力がある。
これもスキルで、まあ。
冒険者垂涎の四次元ポケットなる拡大版が使えるようになるっぽい。
暗転しててそういう説明が読めるだけで。
まだ、開眼もしてないけどね。
「全般のスキルは、とにかく伸びにくいし。派生するスキルが無い!!」
そこか。
◇
一通りの解説を経て。
エリザさんと華さんに、宇奈さんらはゲーム探索側は。
アタッカー過多の戦闘調査隊になってた。
サブジョブにタンク系がちらっと見えるけど――「ウナちゃんまで、治癒士取らないとは思わなかったね? これみんなで怪我したら一寸で詰むとか。そんなん???」
華さんからも意外そうに告げられ。
涙目の宇奈さんは。
「推し間違えただけ。これ、修正、効くのかなあ?」
ああ。
こうやって事故者が増えていくのか。