- C 1112話 唐突ですが、2 -
――で、別室から。
わたしの手を引くエリザさんと、千本松原が。
「あ!?」
蒼の第一声は、そういう間抜けなものだった。
◇
蒼の反応を察した長老さまの態度がさらに硬化。
八ッ橋の者が同室というだけで、唾を吐く。
ああ、これは品位が疑われますなあ。
「床を汚すなし!」
清掃員が颯爽と現れると、モップが掛けしていってくれた。
そういう態度は身を崩すもんだ。
と、片葉のババアが言ってた。
敵対していても、
建前と本音は切り離して、相手には礼を尽くせと。
そんな当たり前のことを説いてた気がする。
「むむ?! そこの娘は二葉の??! 途絶えたのではないのか」
うわ、失礼な。
そりゃリストカットしまくって、一時は病院から軟禁されてたけど。
こうして立派に高校生してますよ。
「ババさま!! 蒼の大事な友達に...失礼なことは」
大事?!――って言葉にますます機嫌が悪くなって。
「なんと情けない事か。片葉は武門の陸華堂とは真逆!! 降霊や神降ろしなどという託宣の者ども、戦の前に鍾馗さまに祈願する習わしもあって、無碍にはせぬが...ワシは好かぬ者じゃて、な??!」
まあそんなにあからさまに。
いや、この長老さまのお眼鏡に適う名家なんてあるんだろうか。
「蒼、もしかしてですが?」
「はい、エリザさんとも仲良くさせて頂いてます!!」
やや凄むように腰かけてた椅子を蹴り飛ばしてて。
わたしの目には新鮮な雰囲気だ。
「そうですか、そう...なら、その縁。すっぱりと断ち切ることにいたしなさい!!! この陸華堂の軒下にある以上は――」
「軒下を借りようとは思っていません!」
切り捨てゴメンってのがあったら、正に今、コレだ。
じゃあ、くるくる回って。
長老さまは画面のフレームから消えてくれると助かるんだけど。
いやいや。
そう簡単にいくものでもない。
おばあちゃん言うには若く、七十頃合いの女性だ。
二十歳のころは相当な美人だったんだろう。
今、この時でさえまるで美魔女だし、怒髪天のその姿も艶があった。
「武術の家に嫁いできたワシが武に明るくないとして、侮っているのであろうが!! これでも先代が亡くなっての11年、宗家を盛り立て差配してきたのはワシじゃて、この目が黒いうちは何があろうとお家大事にを貫かせてもらう」
これは決意表明のよう。
例えば、蒼にこれ以上の武才が無くとも、その他の高弟たちには習得できなかった技の数々は、次代に遺せるものである。彼女の子か、或いは一族から養子を得て、教育すればいいのだから。
うーん、どうしても手放したくないようですな。