- C 1108話 長老どもの賭けのタネ 3 -
いきさつはどうあれ。
プロゲーマーとして、蒼の前にはマル・コメが立っている。
ふざけてる事この上ないのが。
アバター同様の着ぐるみを着用しているという事で。
陸華堂からの使者と対峙した時と、リアルで喫茶店に招いた時も――どういうわけか、その着ぐるみから中身が出てこなかった。いや、それはいいんだけど...注文したパフェが、だ。
たぶん視線誘導させられたんだな。
ゴーレムの前に遭った盛りMAXの商品が瞬時に消えてなくなってた。
器の方は、手に持ってたようで。
さて、そういう変態。
もとい天災と対峙して武道家としての蒼はやや、場違いさを感じ取ってた。
長老の方は蒼の勝利を疑ってはいない。
いくらボットの死体が詰まれようとも、遠隔操作しているのは門下の者で。
蒼ではないからだが。
長老には武術家としての才はない。
どっちかというと家の栄え方とか商才のほうがあるか。
「じゃ、ほら、やろうよ!!」
一戦は交えないと、お小遣いが貰えない。
この戦いに使者を通じて、嫡流家の次期当主からは――「自由に、いや。これは少し違うな。組手の対象は我が義妹に当たる娘で。本家筋から見れば遠く端っこの傍流の家で、祖父が見込んで宗家の傍に置いたのが窮屈そうでな。また、彼女自身も家督を継いで盛栄えさせる意図も無く、いつか家を出ると画策しているところが可愛らしいのだ」
「なにソレ、惚気?」
やや不機嫌そうになる嫡子殿。
着ぐるみのせいで表情が読めないけども、馬鹿にした雰囲気はつたわるもので。
「惚気ではなく、義妹想いの良き、お兄ちゃんだ!!」
「やだ、重い」
兄妹愛の否定にもとられかねない発言だが。
相手が少しだけ理性があった。
「うへぇ~つまんね~」
「その手には乗らぬ」
気を取り直して。
依頼内容に耳を?傾けてた。
◇
蒼の構えは利き腕を半身に隠した手合いのもので。
陸華堂家の正統派なものだ。
この家には正道という先代当主の正統派と。
分家が正眼にて左右対称に立つ“東派”、4代前に分派して別れた構えナシの“西派”があって。
それぞれに長所と短所があった。
「うっわ~ 教科書通りだわ」
蒼は陸華堂兵法というと、これしか知らない。
なんか非常に侮辱された気がしたけど。
その感覚は間違っていない。
ただ、それもストーンゴーレムの挑発で。
すっと視界から消えた着ぐるみを呆然と探してしまってた。
『蒼!! 足元じゃ!!!!』
外野の声で我に返る。
「いや、それは反則じゃない?」
ゴーレムの余裕の笑みは実力の証で――。