- C 1107話 長老どもの賭けのタネ 2 -
「陸華堂の家の者が、コメ氏にコンタクトが取りたいそうです」
とにかく確実にストーンゴーレムへ届けるために、必要な行動をしたと言い換えるべきか。
くだんのストーンゴーレムには親しいという仲の者が少なく『ああ、見たよ! あれは確かベーターテストの受付、あ、いや申し込み...じゃないか』とか『ストーンゴーレムの着ぐるみを着たヤツだろ?! あいつすばしっこくてさ? え、友達...いや知らねえなあ』くらいには反応があるんだが。
相互に連絡が取れるってのがなかなか見つからず。
諦めかけたところで――。
なら、白豚がいいと一本、線が繋がったというわけだ。
「で、おまえがメッセンジャーに?」
非常に訝しむアイコンが吹き出しに上がる。
続けざまに。
ジト目のアイコンが明滅してた。
「小遣いまで貰ったからには、ね」
レバーが周囲を見渡したのにはもうひとつ。
ぞろりと物騒な連中が出てきた。
「くそー!!! その小遣いで...売ったんか? ボクを?」
小首を傾げてるっぽい動作は所作で分かる。
直接話してた傍から、吹き出しアイコンに『ゴメン』が灯って。
呆れた。
「もー... プレイ付き合わないぞ!!!」
「そんなコト、言うなよ~腐れ縁じゃんよ~」
で、段ボールは逃走した。
「これじゃあ、PKじゃんか」
いあ、MPKか。
モンスターのタゲを適当な対象に擦り付けて、プレイヤーをキリングする方法。
PKエリアや、PK鯖が意図的に用意されなかったゲームで生まれた、手法なんだけど。
人の悪意これに極まれりといったもので、道徳感が疑われる。
◇
どこかの誰かが、アクション系RPGのような世界に仕込んでいるので。
時々、名の売れたゲーマーは辻格闘に引きずり込まれることがある。
「お、またか!」
花街か、はたまた温泉街のような雰囲気のある仮想空間に。
大路のど真ん中で白昼の格闘。
これでギャラリーが立たないわけがない。
「じゃ、賭けるか」
「おお、いいねえ。俺はコメ氏にバナナコイン300だ!!」
この世界の基軸通貨。
一応暗号通貨の態だが、100バナナコインで1万から1.5万円くらいの価値になる。
「しっかし、あの挑戦者どこのもんかねえ?」
掛ける者があれば、単に観戦者に。
囃し立てる者とか色々な住民たちで、彩り豊か。
そんな対峙してる対象をエサに。
『軽食はいらんかね~』
って、デリバリーが。
ストーンゴーレムのマルが唐突に挙手してて「はい!はーい!! ボクにも一つ」と。
クロワッサンをお買い上げしていく。
「陸華堂のスカウトっていつも、こんなん?」
応えそうにないことを質問してみた。
クロワッサンがアバターに吸い込まれて消えると、
ストーンゴーレムの頭上が光ったような気がして――
「そう、今のはバフ効果が入ったわけ。ボクを5分以内に倒せないと、君たち? そのVR機器から強制ログアウトさせちゃうからね~♪」