- C 1105話 蒼がしたいこと 5 -
蒼が戦場にまで歩んで行ってから気が付いたけど。
彼女は当初、ストーンゴーレムというプロゲーマーを舐めていた。
メディックボットでも喧嘩くらいは出来るが、対人戦を想定はしていないだけで基本的に、患者が望めば明るい未来が、希望が見えるというコンセプトで開発されたものだから。ともすれば、激しく動き回るスポーツ代表というと、バスケットボールかフットボールか何かだろうか。
或いは拳で語り合うボクシング。
防水と耐圧スーツを用意すれば、海やプールも泳ぐことができる。
ただし、競技への参加は難しいだろう。
「そりゃそうです、ボクでなければこんなロボット、倒せないと思いますよ? それはフェアとは言いませんし、楽しみにしてた患者にも気の毒です。ま、ボクの妹分はそれでもこっそり出場しちゃうんじゃないかって、常習犯なんで」
聞いてないことをすらっと呟くゴーレム。
着ぐるみを着てはしているけど、中身は蒼と同じ人間だ。
肩書は――
人類最強?!
「ひねりがない」
「要らないでしょ、ひねりなんて」
仮想戦場の出入口に立つ。
草原の青い草の匂いが鼻下を擽っていった――風、こんな柔らかくて気持ちのいい微風も再現できるんだ。
人工島はコスパ重視の、経済巡航速度で海の上を走っている。
べたつく潮風をぴーかん照りに受け、じりじりと肌が焼けていく感覚の上に、ぬっる~いそよ風だったもんが通り過ぎていくのが、この島の特徴である。ま、そのそよ風も走ってる島が人口で作っているものだから。
なんというか。
オイル臭いとでも言うか。
◇
ストーンゴーレムと同じような戦場に立ったとこで、蒼も正気に戻った。
はやり熱のような感覚で、自分の意思とは真逆な行動をすると認識していたのに――違和感に感じていても冷静になって立ち止まるって、選択肢がなくなってたような気がした。
で、蒼は自分の身体の主導権を取り戻してから一気に覚めた感覚。
「っちょ?!」
ゴーレムの周りにボットの死体。
「さっきも言ったけど、安い挑発に乗ってくれてありがとう」
スキル・挑発。
レベルアップしても確率によってファンブルする性能というと、このスキルの右に出るものはない。
しかし一度成功すると、対象のタゲを一身に集めることが出来て場を支配できる。
また、こっちの副次的な効果が大きくて。
対象は単純な行動、単調な攻撃、与ダメージとクリティカルが半減するという。
『ちょ、反則じゃないの?!』
なんて、蒼もわたしに食ってかかったけど。
抵抗が容易で、逆に反射もできるという。
状態異常を狙ったら、逆に我を失うこともある。
使い難いので(わたしらのプレイしているゲームでは)取得しているプレイヤーは。
たぶん居なかったように思う。
「じゃ、一手、御指南を貰う前に自己紹介」
自己紹介?
蒼はジャージの上衣を剥ぎ取って、
スポブラと短パンだけに。
ランニングシューズは、ジャージと共に転がってた。
「ちょ、畳まないの?」
「えー、めんどい」
そんな子でした?!