- C 1099話 わたしがしたいコト 4 -
絶対に引かれるかもしれないけどって。
もたもたしていたら――「天心さんにしては時間を掛けますねえ。じゃ、蒼から一歩踏み込みますね? へいへい彼女、暇ならお茶しないかい?」――ドヤったノリで蒼がわたしの顎に指を掛けてきた。
「ナンパか?」
「うん、ナンパ」
「ナンパ言うな。蒼の尊い何かが崩れる、崩れる~」
わたしの前では謎のままでいて。
彼女を知りたい自分と、ミステリアスのままでいいという自分がごちゃ混ぜにある。
ま、まあ、これは宝探しだ。
ちょいちょい掘って、ニヤニヤしたいじゃないか。
「蒼そんな、謎っぽいの盛ってませんけどね?」
いあ、いやいや。
ちょっと前にさらっと。
『あたいは、陸華堂のもんだって』告白してくれたじゃん。
アレがなければ、ね。
ミステリアスなんて言葉は出なかったと思うんだ。
ちなみに、
片葉家は人工島勝ち組の中で、最弱と言ってもいい。
嫡流御三卿の四葉が宗家の管理代行者で、土地を、あ...えっと不動産を少々手広く転がしているようで。
本当にこれといった大きな事業に手を染めているわけでは無い。
なのに家だの、血統だのと呪詛でも掛けているのかって具合に、親戚一同を振り回してた。
「あー、そういう悩みって何処の家も同じですよね!」
ちかくに共感できる子が。
皮肉かも知れないけど、
蒼も分家だけど才能があるという理由で、内内に結婚させようと動かれたことがあるという。
マジか!?
「え、それどうやってそ、阻止したの???」
まさに。
今、私の立場が危ういんで参考までに。
「ボコした」
「ん???」
聞き間違いかな。
「ボコした、えりんぎに正拳突きかまして、ボコした!」
だめだー参考にならなかったー。
バーサーカー・蒼は健在と分かるエピソードだと思うけど。
「良かったの?」
「何が」
悪びれるとか。
或いは気まずいとかそういうのは無いのか。
「ああ、そっちか」
どっちですか。
「40もすぎた中年のDTと14歳の少女に結婚前提の契約なんて、時代錯誤も甚だしいと思うじゃんよ。さすがに家の~とか聞かんわ。蒼の好物はBLとショタだけど、志向は百合なの!! 見るのも見られるのも、弄るのも百合なの!!!!」
力説ありがとう。
お、おう。
そ、そ、そっか。
「――で、彼女? 蒼と同棲しなーい?」
これは...
えっと、恥ずかしそうに掌だけをわたしに。
いあ、見えて無いからソレ、指があたしに触れてるんだけど。
広げてる手にわたしが、あたしを載せてみた。
これが返事です。
◇
ファミリアの通信から戻ってきたわたしは、風邪を引いた。
風呂上りからこのかた、ほとんど素っ裸にタオルだけでファミリアを装着してたんだ。
だから全身真っ赤になって現実の緒部屋に戻ると。
天使の呆れ顔を見て、転倒。
焦点がぐるぐる、ぐわんぐわん回ってた。
『天心さんもバカですねえ~ ま、肺炎にならないようヒールは掛けておきます』
じゃ、風邪もついでに治してください。