- C 1098話 わたしがしたいコト 3 -
『そういう事でしたら、』
天使がふらっと現れると、
くるりとその場で一回り――エプロン姿でキメてみる。
『おかえりなさいませ、お嬢様がた。お風呂にしますか、それとも...お夕飯に?』
なぜかもう一言続きそうだったので、わたしと蒼は天使にグーパンで黙らせてた。
天使は『気が合いますね』と残し、退散していった。
◇
気が合いますね、か。
ああ、確かにと。
互いに寄せ合った手が、指が触れ合う感じがした。
ああ、うん。
確かに気が合いますね、か。
「部室に、その。誘わなくてご、ごめん」
わたしから謝罪した。
それが筋のような気がした。
で。
蒼は苦笑しつつも、いつもの微笑みで。
「蒼は気にしてません。天心さんの親友ですから!!」
と、胸に手を当てて、ドヤってみせた。
ああ、うん。
なんかつっかえてたもんが消えた気がする。
何に悩んでたんだろう。
わたしには、蒼がいるだけでいいじゃないか。
「じゃ、もうひとつ」
ん?
唐突に蒼が神妙に口を開いた瞬間――
「蒼は陸華堂の者です」
え?
そりゃ当然、そんな間の抜けたような声が漏れて当然だと思う。
マーシャル王立魔法学院というイロモノの高校にも、進学率が異様に高い学級があるし。
学校名しか見ていない企業や学府でなければ、学び舎としての環境はすこぶる整われている。
わたしの記憶では...
「蒼は普通科ですよ」
そう、そう。
マルやエリザさんらは、イロモノの方に入学して。
いったいどんなカリキュラムで勉学に励んでいるのやら。
あー、マルの蜃気楼が浮かんできて。
左右に手を振って『勉強なにそれ? 不味いご飯は食べる予定無いから』と、告げてる妄想が浮かんできた。
ただ、マジにそう言いそうなのであながち妄想でもない気がする。
エリザさん、アレだ。
『ころころ微笑みながら、マルちゃんの後頭部を叩いてるでしょうね』
天使がわたしの妄想に絡んできた。
アレも同じ絵を見たらしい。
「天心さんこそ、どんな勉強を?」
ああ、そっか言ってなかった。
「聞いてません」
なんだろ。
会話が成立する心の声って、わりと相思相愛?!
「だと良いんですけど。仮想空間のせいで言語を視覚化されているので、もともと独り言の多い天心さんにとっては物凄いお喋り感のある人になってます。特に、あの...試合会場でもずっと独り言が噴出しテロップになってました」
ぎゃああ!!!
今の心の絶叫も、レタリングタッチの擬音として飛び出して行って。
それを、わたしが見送ってた。
マジか?!
だから、レスポンスの速い会話が成立してた。
「ま、まさか...」
「このお部屋は、素敵ですよね!! 蒼とても気に入りました!」
ま、いっか。