- C 1096話 わたしがしたいコト 1 -
帰宅して、そのまま服を脱ぎ散らかして――湯船に浸かってるわたし。
玄関のカギは天使が施錠してくれて、左足の靴が逆さまっだのを直してくれた。
敷布の上に手提げ鞄。
リビング前の廊下にスカート、ブレザー風ローブに。
くしゃくしゃの靴下、裏返ってたり、丸まってたり。
ブラウスは洗濯機の前で、ブラは投げて洗面台に滑り落ち。
ショーツは... 洗濯機の端に引っかかってた。
衝撃で、張った水の中に落ちてくれるだろう。
で、
あたしは心臓が止まりそうなくらいの冷水の中で――
「ぎゃあああああ! つめたーい!!!」
ま、叫んでる。
◇
夕方以降、マルに奢ってもらった夕飯でコトを済ませて帰宅するまで。
いろいろあって、いろいろ悩んで、いろいろ...考えさせられた。
結局、わたしは蒼のことを知らないままだ。
冷たい風呂桶の水も。
入ってる内にだんだんと温かくなって。
今出ると、きっと風邪をひくかもしれない。
《なんか、理不尽だ》
◆
板間の上で相対するは、ナイフ使いの“死神”と呼ばれた傭兵。
その魂魄を基にしたボットがある。
右に、左にと構え直しても、攻めにくい正眼で対応してくる。
「やっぱり崩しが...、使えないか」
守りをだ。
“死神”はどっちかというとカウンタータイプ。
木剣とはいえナイフのような小刀を見えるだけで4本。
隠し手で2本持っていて、投擲のような戦術は1ないし2割程度しか見せてこない。
とにかくカウンターを狙ってくる。
ただし。
躊躇したり、怯むと。
途端に襲い掛かってくるので厄介だ。
「くそっ! 誘ったつもりも無いのにぃ!!!」
一気に距離を詰めてきて、
木剣の投擲。
弾いたら、死角から拳が振り下ろされてた。
寸でで回避し、迎撃の暇なくそのままボットの背中が見えて――
「うぐっ」
回転の乗った踵落としが振り下ろされてた。
演者も咄嗟に頭に近い位置で腕をクロスに受けきったけども、そのまま板間に叩きつけられてた。
「大丈夫か?!!」
ボットの制御盤についてる同門の徒。
友人というよりも縁戚者で。
同年代。
「うーん。大丈夫かは程度に由るかな? すっごい痛いんだけど?!」
ボットのボディは初期モデルから相当、頑丈にはなっている。
改良の余地は硬質化だけではなく、滑らかな動きにも反映されて。
「半年前より強くなってない?」
「あー、たぶん。まあ、中央区襲撃事件で、ドローンボットが投入で来ていたらっていう推進派の連中が、たらればもいい事にお熱でさあ、拳銃弾くらいは弾くらしいよ?!」
そんな硬質な素材が、だ。
自重何百キログラムに遠心力加えて攻撃してくるのは――
「反則じゃないかな? 反則だよね、めっちゃ腕が痛い!!!」
てなわけで。
ボットはコクーンの中に戻っていった。
「で、何にむしゃくしゃしてたんだよ。蒼はさ、年の近い“お兄ちゃん”に話して」
「はあ?」