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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
天啓がありまして
2240/2361

- C 1094話 蒼のこと 4 -

「シュッ」

 ひとりで大立ち回るにはとてつもなく広い板間。

 大粒の雫が磨き上げられた茶褐色の板の上に点々と落ちていて――

「シャアツ!!」


「セイッ!」

 短くも気合の乗った声が飛ぶ。

 ここ暫くは身体が温まるまで、準備運動のように“()”稽古でアップしてきて。

 もうかれこれ2時間は、この短い声音が板間に響いてた。

「気合が入ってるようだけど? なんかあった」

 部屋の戸口に人影。

 先刻からずっと立って見守ってたけど。

 なんとなく気まずいので声を掛けてみたところだ。

 同門のよしみ、で。

「んにゃ」

 短く返した。

 けど、何かあったかは演者の動きで分かる。

 キレが微妙だ。

 確かに力強いし、踏み込みや突きの残身による止めのひとつ、ひとつは達人の域。

 演者を知らなければ『今日も好調ですね!』と、逆鱗に触れかねないが。

「またまた~ スパーリング、手伝おうか?」

 身内だからこそ見える、足捌きに戸惑いが見れた。

 演者は板間の中心に立ち戻って、

「スパーリングよりも、ボットの用意を」

 医療用のアバターモデルではなく、軍用の方を所望してきた。

 試験用にいくつかは工場から直接搬入させたものだけど。

《憂さ晴らしに付き合ってもらうから》


◇◆◇


 さて、前日に少し戻る――約16時間前のこと。

 チャンバラ同好会が使ってた、旧部室の細やかな女子会だけど。

 あおい 勇樹ゆうきの素性当てイベントに発展してた。

 まあ、結論から言うと。

 蒼は旧友の千本松原嬢の頭を鷲掴みにすると、

「おほほほほほ...」

 なんて気味の悪い微笑みとともに姿を消してしまった。

 そう、何も教えてくれはしなかったのだ。


 わたしらは、部室の中でぽつんと残されて。

「マルのせいだからね!!」

 誰のせいでもないと思う。

 本人からは掠った、惜しいなんて言われもした気がしたけど。

 本当かどうかは答え合わせがないので、なんとも。

「天使はどう?」


『どうとは?』

 天使の眼力ならば。

 例えば“天使鑑定眼エンジェル・アイ”とか。

『そんな都合のいいスキルは持ち合わせてません。と、いうか、鑑定スキルはありますが。例えば、そうですねえ~ この脱ぎ捨てられたように見える靴下... 鑑定すると【アイテム名:靴下】【装備者名:二葉 天心】【効果:対・冷え性+、防御+1】【嗜好:変態を惹きつける】【備考:あおいに脱がされ嗅がれたもの】と、まあ。こんな感じで...』

 ちょっと待って、待って。

 情報量が多いんですけど?!

『ええ、仮に蒼を鑑定しても、蒼は蒼なんですよ』

 そこじゃないよ、そこじゃない!!

 今、しれっと、さ。

 蒼に脱がされ、嗅がれたとか。

『鑑定しただけですけどね』

 ほら、部屋の奥で固まってるマルがあるじゃんよ。

「いあ、ボクは聞いてない、聞こえてないから。その好きにすすめていいよ?」

 ああ、もう。

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