- C 1088話 かつては、3 -
「いたーい!!!」
そりゃ、痛いよねえ。
串を刺す子がありますか!!
串危険。
「蒼、この子も反省しているようだし?」
わたしはそうだなあ。
得意なゲームでも衛生兵をロールプレイしている。
自身は自傷行為をするけど。
ま、それが性に合っているような?
わりとリカバリーには自信がある。
「うん、知ってる」
え?
「だから、天心さんが衛生兵でプレイしてて、友軍が安全に治療に専念できるような死角に身を、潜められるよう苦心しているの知ってるって言った」
肉巻きのボーイッシュちゃんが唸ってる。
彼女のストッキングを丸めて口封じ中。
そんなわけで悶絶中なのだ。
蒼に虐められると、萌える子とのことで。
これはまあ。
ある種のご褒美になってて。
「裏取りするまで伏せてたけど。蒼も『霧の向こうへ』をプレイしてるんです」
おっと意外な告白。
いや、その前に――
◇
『霧の向こうへ』というVRは。
プレイヤーの自由度が広く選択肢も豊富に用意されてある。
基本はPvP。
対人シューティングゲームで、2種の職業とそれらに紐づけられたスキルにパーク。
ある一部のマニアに“ロボゲー”とも言わせている、強化外骨格のスキンやステ振りがのめり込むいち要素だと言われている。
プレイヤーのアバターが貧弱でも、強化外骨格が強靭であれば、だ。
残りはすべてはヒューマンテクニックでカバーできるという点も魅力だった。
ガチなとこは、ガチで。
ファンタジーなとこはファンタジー。
セクシーなとこは何処まで行ってもセクシーって言われてる。
そこに、蒼もいる?!
「蒼だけじゃなく、千本松原もいますよ!! ま、これは偶然ですけど...二葉を知ったので。暫くつるんでみました」
世間、狭っ!!
「世間じゃなく、ゲーム内フィールドがです」
まあ、そうだろうけども。
えっと...じゃ、じゃあ?
「蒼は敵勢力に居るんで。天心さんの隠していった愛を大切に使わせてもらってます(天使のような感謝をわたしに向けて来てくれるが)」
物資紛失による制裁プログラムで、わたしの評判が駄々下がりした原因は蒼か。
戦略物資なので喪失すると、陣営の継戦力が著しく下がる傾向にある。
PvPに自信が無いプレイヤーは後方支援として。
その戦略物資および、ポイントを増やすためのクエストに参加しているわけだが。
「なあ、蒼さんや」
「は、い?」
肉巻きのボーイッシュちゃんを踏みつつ。
態とじゃない、態とでは。
たまたま踏んでもうて。
「わたしの評判、悪くなるから陣営、替えてくれる?」
これはマジ。
彼女の目をじっと見つめて、
瞬きもさせずに一考させる。
で、返事は催促するよう、静かに揺らして――「えー」を引き出した。