- C 1084話 天秤のゆくえ 4 -
「蒼は何処にも行くな!!」
これはわたしの意思。
唯一の友達だし、親友と呼べるような付き合いになりかけてたから。
いや、わたしだけでも呼んでいいと思ってる。
「うん。天心さんに質問です」
どこから親友って呼ぶんだろうって、考えても。
そもそも本格的な友達というと、後にも先にも彼女しかいない気がする。
そうなると親友ってどうしたらなれるんだろう。
「――ううん、分からないけど関係ない。蒼は蒼だから、何かが問題のように壁となってくるとか、足枷が増えるとか――物理的ならどんな壁だって乗り越えてやるし。足蹴にしてけ破ってもする、だから蒼はそのまま此処にいていいんだよ!! いあ、わたしの隣で笑っててくれて」
ちょっと重たかったか。
距離感なんて分からないし、近くにいたメイド長だって結局はわたしを捨てた。
自分の幸せを優先したのだし。
「あはははは」
やや乾いた笑いが蒼から漏れた。
でも、何度も手の腹で目の端をぬぐって見せてて、
「蒼は愛されてますね、それも誰かに見せつけてやった時のような見せかけじゃなく。こう、ぐっと心を鷲掴みにしてくるような。そう、芯のある告白も天心さんに言わせてしまいました。出来れば、蒼が言いたかったんですけど...この関係が壊れるんじゃないかって」
蒼も似たことを思ってた。
慎重とも言えない大胆な遊びで、外堀を埋めて。
振り向かせる手はずを整えて。
◇
「まあ、言うて。総長も百合に憧れてチームを結集させたのに硬派なんて全く縁のない人でしたもんね。それでいて腕っぷしは強く、惚れられる対象で惚れる人が少なかった、そんな」
ま。
ボーイッシュのキミは余計なことを口にし過ぎだが。
正直に紹介されると、悪い子じゃなかった。
「どうも、趣味は手芸な特攻隊長してます“千本松原”です」
渾名は“せんぼん”。
蒼が同人作ってマンガ描いてる趣味を、チーム内で知る後輩である。
中学の時に勧誘したというから。
「まさか?!」
「(ややバツが悪そうに猫背になる角縁メガネっ子)小学生から単車のケツに?!!!」
さすがに引かれた。
そんな筈はない。
ボーイッシュちゃんと、蒼の年の差は1つ程度。
ほえ~ってヌケてるときは蒼が幼く見えるけど、彼女は17の後半くらいで。
お、ちょっと待て。
「蒼...、さん。なのでは!?」
そこか。
天使にツッこまれた。
いや、体育会系では大事な話では。
「後半っても、生まれは1月ですし。1年ダブりですのでセーフですよ」
そうか、そうか。
ふふ、そうか...
なんか出会った時よりも蒼のことが知れた気がする。
う~ん、ふ~ん。
「なんか嬉しそうですね?」
ボーイッシュの子が察知してくれたけど。
この後の言葉で、わたしは転落したんだよな。