- C 1077話 文化際・ダンジョントラベラーズ 7 -
塔にはボス部屋と称される空間が、5階と10階に用意されてあって。
そこでは、来るもの拒まずに常に解放されている状態。
要するに、だ。
ソロで挑んで倒せるほどヤワでもなく。
1パーティで独占するほど規模が小さいわけじゃない。
フロアをどどーんと広く使っても尚、狭く。
圧倒的な耐久力と、圧倒的な攻撃力で挑戦者を待っているような、そんなヤバイのが居る。
なんで、そんなものが居るんだよって。
魔法科の連中に殴り込みに行きたいけどもだ。
とりま、今。
ダイブしているプレイヤーの3割が5階のボス部屋でレイド戦の真っ最中だ。
5階より下階の方に配置されてたモンスターはみな低レベル。
まあ、1匹倒したら破格の経験値が貰えたので、自分たちのレベルと強さに錯覚すると思うんだ。
『意地が悪いとは此の事ですね』
天使が5階をリサーチしに行ってて、帰還したとこだが。
その雰囲気だと、上も最悪って感じかな?
『最悪も最悪、余ほどの準備が必要です。ネタバレになるので、何が居たかは教えられませんが。アレを初見殺しだというのでしょう――と、それよりも、この状況は?!』
ああ。
天使にもバレたか。
今、ちょうどヤバイ連中に絡まれてるトコ。
『天心さん、あぶない!!』
男の差し伸ばした腕を天使が弾く。
借り物の“ファミリア”の性能では、天使のような高次元な存在を見ることが出来ない。
っぽく、何か強い力で弾かれた事象だけで驚いてる様子で。
わたしだけでなく。
蒼にも触手が伸びて、叩き折られてた。
彼女が装備してた戦斧による。
装置をOFFにすると、戦斧はデッキブラシに変化するので。
骨が折れたならフルスイングで逝った可能性だ。
「な、なにしやがるんだぁ!! このアマぁ」
勝手にキレるなよ。
襲われてるのこっちなんだけど?
「大人しくしろよ、こんな四つ角の多い風景じゃよ。音も拡散されるし、何されてても見えやしない...」
今、あなた方が何をしようとしてたのか。
ファミリアを通して吐露しちゃうんですか?
ちょっと考えれば分かりそうなものだが。
PKはルールの範囲だから見逃される。
これはPvPが認められているから。
そうなると、だ。
PKKって存在もあるわけで――おっと、ファミリアのログから、おっかない人たちが駆けつけてくれたようで。
「まーた、お前らか?!」
また?
「どうよ? 上物だぜ」
PKKとPKは自作自演のシーンもある。
しまった、今回は貧乏くじをこっちが引いたわけか。
「蒼が天心さんを守ります!!」
デッキブラシ、いや、もとい戦斧だ、戦斧。
距離を詰めてくる連中に向けて凄んでみせる。
腕を折られた男は退場したようだけど。
ゲスな男たちはまだ、5、6人はあって。
これ、詰んだ?