- C 1072話 文化際・ダンジョントラベラーズ 2 -
魔法科のジャージは神学科のものと比較すると、見た目からして動きやすい。
たっぷりとした雰囲気があるのに、こう。
デザイン的な機能性と、シルエットからして。
オシャレなのだ。
どこのどいつが採用したんだよ。
神学科のローブっぽいシルエットとラッパみたいな裾のズボンで、だ。
肌は隠されるけど、動きにくいってありゃしない。
だからわたしは、ズボンを裁断して半ズボンにした。
結果、短く詰めたはいいけどボロボロになったんだな。
裁断後に糸くずが落ちるようになって。
今ではだいぶ短くなってしまった。
『特殊な編み方だったのか、確かによく糸くずが洗濯機の中にありますものね。まさか、あれで洗わなくなった?とか...じゃあないですよね』
天使の質問はずばり、その通りだ。
洗うたびに短くなるズボン。
ローブの肩掛けマントがあるなら袖は要らないな、と。
千切ったらコレも。
どうも糸くずが多くてかなわない。
今、脇からたわわなあたしが見えるようになった。
『はぁ~』
天使の呆れたような吐息が耳の端で聞こえた。
蒼は嬉しそうなんだけどね。
魔法科には神学科にはないもう一つの特徴がある。
魔法科が学院の顔であるように、ジャージ一つからして力の入れようが違う。
また体操服の方もだ。
男女の違いは上衣のシャツが下着も兼ねるサポーター付きであることと。
ひざ丈までしっかり伸ばされたズボンを採用しているという事だ。
神学科の女子の下衣なんて、黒っぽい紺地かぼちゃパンツだ。
「蒼は思うに、お似合いだと思うのです!!」
ま、蒼の目は、さ。
わたしが着ればって条件付きだろ。
可愛いのだと、評価はありがたいけど。
着用している本人たちは恥ずかしいのだ。
ちょっと考えてみよう。
確かに下着のラインは見えにくいけど、女の子だけがかぼちゃの形をしたズボンを履いている異様な光景に対してだ、好奇以外の目で見られてると自覚したらどう思うか。どんなに言葉を尽くし飾り立てたとしても、それは恥ずかしいのだよ。
わたし達も男子と同じズボンにしてほしいと。
ま、男子の方も方で、問題がないとは言いにくい。
部分的にアレが...はみ出してるのが見えると、だ。
『欲しがり難いって事ですか?』
そそ。
なんかさ、サポーターが無いのか。
支給されてる下着が緩いのか。
男の子が暴れん坊なのかって、ね。
「魔法科のジャージって、見た目がうさぎっぽい耳付きパーカーである以外は、いたって普通にしか見えないですよ? まるで普通科のような」
その普通が欲しいんだよ。
ケモ耳付きフードって特徴は可愛いじゃんか!!
マルのは猫耳だったし。
借りたエリザさんのはウサ耳だった。
聞けば、その他にクマ耳やサル耳、イヌ耳にミッキ耳、エルフ耳があるって話だし。
ちょっと袖の下を通せば、光学迷彩もつく。
◇
1年中、赤道直下にある人工島の特徴として。
センタージップ付きの七分袖パーカーの裏生地には、多くの卒業生からの意見が取り入れられて。
なんと10年前から冷感ジェルタイプの新素材生地が採用された。
今、軍部の方で採用している作業衣と同型のものであるという。
くうー。
なんて待遇だよ!!
もう一度言う。
なんて待遇だよ!!