- C 1070話 文化際・爆ぜろ、わが身 4 -
人工島合同文化祭の出し物史上としては、おそらく大掛かりな仕掛け付きの演劇。
聖女ジャンヌと、その双子の生き別れた“姉”。
ふたりの真実の愛と、揺れ動く優柔不断なジル・ド・レイ将軍――って構図も変わってきて。
スピンオフ的な。
蒼制作のBLと百合の両ジャンルで稼ぐ同人誌。
わたしも手に入れるチャンスがあったが。
エリザさんと絡む姉妹丼の薄い本。
と...
マルは、フランス軍大元帥として登場はするんだけど。
まるで出番がないにも関わらず。
なぜか、NTR将軍の相手方として奮闘し、彼と掘る、掘られるって本に仕上がってた。
濃厚過ぎる。
耐性のないわたしの赤面は想像に難くない。
『天心さんだけじゃなく、マルさんも固まってましたね』
スク水の影響が、ああも形になって影響するとは。
だれが想像できただろうか。
◇
天使曰く。
蒼は逞しすぎるのだという。
そうだろうなあと、確かに時々見せる彼女の性能は素晴らしいに尽きる。
だけど、だけどね。
あの子は本土から逃げるようにして――
この人工島に流れ着いたっていう背景がある。
一切、話してくれないけど。
『負い目があるとか、汚されたとかの雰囲気はないんですけど。天使が見えて、話せるという点でいえば。天心さんのように三途の川のほとりに突っ立てるようなトコはあると思うのですよ。天心は、かなりのリストカッターでしたけど』
手首の傷は消えているけど。
天国と地獄の間にある規律でいえば、自殺した者には天国の門は開かない、だ。
半強制的な、厚生プログラム。
神様は“あなたがた”子羊たちを見捨ててはいませんよ、とする新しい試みに偶然選ばれたわたし。
自殺願望が強く、陰キャでともだちの一人も居なかった。
わたしは今、蒼がいるから踏ん張ってる気がする。
『きっかけは何でもいいんです。受けた生は全うすることが、です。この世界における最大の試練にして、最大のギフトなのです。天国では、その幸せなページとともに無へ至るまでずっと過ごし続けるのですから』
ほ~ん。
そうかい。
「じゃ、今のこの盛大に燃やされてるイベントも、心のどこかに残っちまうよなあ。なあ、天使さんよ... っ、わたしさあ、パンツ履いてたんだと思うんだけどさ。エフェクト掛かるから平気だって言われてたんだけど、さ...目の前を端が焦げた布が舞い上がってたんだけど...」
これ、ほとんど裸に剝かれてねえか?
走馬灯さえ見えてるし。
マジに燃えやされてねえか、な。...っ、なあ?!
で、天使による自己防衛機能が発動した。
なんてことはねえ。
大爆発だ、大爆発――たった今、わたしが爆発したんだよ。