- C 1067話 文化際・爆ぜろ、わが身 1 -
王立魔法科高校の公演は成功したような、気がする。
ハプニングさえも演出だと誤魔化して、だ。
残念ながら。
わたし個人は、楽屋にて『お嬢様は、何してらっしゃるんですか!!!!』と。
元メイド長に怒られてた。
しゅんと小さくなる。
「殿方を貰う側だと理解していますか?!!」
二葉家は、今や没落寸前である。
まあ、親戚の誰かを養子に迎えて、彼らに譲れば家の束縛から逃れることは出来る。
と、なると。
宗家直流の血統からみると、だ。
二葉は継がなくていいのなら、宗家で婿を取れって流れになる。
これが面倒なので『二葉の再興』を掲げてた。
はずだった。
「えー、茄子きら~い」
好き嫌いの問題ではない。
しいて言うと、だ。
ゴーヤとヘチマも嫌いである。
あれが、だ。
入るとは思えないんだ。
腹が避ける気しかしないんだが。
「また、そんな屁理屈を!!」
元メイド長は。
わたしに見せつけるように、赤子を抱いて大きくなった腹の姿である。
わざわざの妊婦さんは、だ。
わたしに『進学よりも、婿どりを』と催促にきた。
侍女長は、恋愛結婚の癖に。
楽屋の絡みに蒼が参加しないのも、彼女なりの配慮というか。
空気を読んでた。
友達なら、口は挟まないだろうし。
友達以上でも、家の事情には挟みにくい。
女、ふたりで守れる家は屋台骨が痩せていないからだ。
◆
元侍女長のストレス発散に付き合った、あたしが解放された。
楽屋の空気はすっかり冷めた感じ。
ま、侍女長の気持ちを考えれば。
天塩に掛けて育ててた娘の変わり果てた、おっぱいが――寄りにも寄って、公然の前に零れ落ちたのだ。そりゃ親の代わりでキツくもなるし、小言にもなるだろう『破廉恥な!』と罵られても仕方のないことだ。
しまいには。
演目の最終幕。
悪女、魔女だった“わたし”は嫉妬に駆られて、将軍の名を叫んで盛大に燃やされる。
いあ、脚本的には篭絡し、児戯でも“愛”に飢えていた竜の乙女は――
観客も乙女に同情しながらも、火刑で散る悪役の最後を共有する。
NTRは鉄槌を喰らうという理屈と、もやもや感が与えられたままだが。
◇
今、楽屋では3回目の公演について。
何回目かのエフェクト効果について話われている――わたしの“火刑”シーンだが、すでに初回と2回目とで燃やされ方に差異があり、どんどん派手になってる気がする。最初は、魔法科によるAR仕様の嘘っぱち演出だった。
ARゴーグル越しの奇跡だったので、零れた駄肉が演出だと受け入れられたが。
ARゴーグル不要論が噴出して、演劇科が押し切られてしまう。
いあ、押し切られた前提がある。
掛けなくても、魔法科の連中は“魅せる”ことが出来たからだ。
仕掛けは、最高学府から持ち込まれた壮大な舞台装置。
展示用虚像投射装置、いわゆるホログラムだ。
だれがここに持ち込んだのか。
言わずもがな。
八ッ橋財閥の力押しで、デモンストレーション。
「天ちゃん燃やすなら、派手に行こうよ!!」
この一言で、だ。
演出家の講師殿に火が付いたってわけ。
もう、もやされるの... わたしなんだよ!!!