- C 1060話 もう、次から次へと... 5 -
「ハナ姉と一緒だと思う!」
うん。
それはコンビニで働いてる、マルの姉さんか。
「マルちゃんとは親戚同士ですけど。ま、母親よりかは姉の立場ですね、あの人も」
エリザさんが告げた。
家族の情報だが、そう他人に告げちゃってもいいもん。
「いいんですよ、司馬家の家の方たちはわりと緩いんで」
言うねえ。
八ッ橋財閥と置換しても差し支えのない、人工島きっての大富豪。
そこのお嬢様だから、最初はこっちも身構えてたが。
マルみたいな雑草といるだけで想像できないし。
そのマルが婿候補だって言うんだ。
そっちがもっと解せない。
まさか、相続目当てじゃ。
「エサちゃんの家のことは、詮索しない方がいいよ? 天ちゃんの、細やかな銀行口座が凍結されかねない。怖いよ~ああ、怖い、怖い」
エサちゃん?
八ッ橋エリザの愛称だと言ってたな。
本名がエリザベートなら一般的な愛称だと「リーザ」か。
エリザベスの「リズ」に近いわけだが。
エサはちょっと、可哀そうでは。
「そうですか? 私は気に入ってるんですけど。アバターネームも『エサ尉官』ですし」
尉官の方は、人工島自衛隊主催のボーイ&ガールスカウトに参加して得た階級からの引用だという。
上級流階級者の義務として、ボーイ&ガールスカウトに入隊することが決まっている。
わたし以外の親戚は皆、参加して下士官止まりだった。
それらを踏まえても。
エリザさん、あんた何者だよ。
◇
水着の調達のためにショッピングモールに潜り込み。
八ッ橋家御用達の呉服問屋の更に奥へ、放り込まれて採寸され。
友人たちに勝負下着でもない、わたしが晒されて――「ふんふん、お風呂、いつ入ったんです?」なんて、エリザさんに嗅がれたトコまでは覚えてた。
もーどうして!!
どうしてわたしは、裸なんだー!!!
「試着室だからねえ、天ちゃんはマネキンのつもりで立っててね」
マルの声がする。
「今、天使さんが主導権握ってるんです。天心さんは内側にいます、蒼の筆にびんびんと伝わってきます!!」
お、おう。
蒼は、わたしの裸体デッサンに夢中のようだけど。
困惑しているのは理解してくれてるわけだな。
「天心さんが、2日前にお風呂に入ったというので。試着後はモール最上階にある、露天 艦橋バスプールに寄って皆で洗いっこして帰りましょう!!」
こういう(財布の中身を気にしない)高そうな提案をするのは決まって、エリザさん。
呉服店だってのに越中ふんどしってネタ以外の水着バリエーションが豊富なのも謎だけど。
Tバックだの。
Tフロントか、
殆ど紐じゃねえか!
「紐じゃねえ、かー!!」
思わず声出ちゃったよ。
「紐、最高です。蒼の創作チャレンジにご協力感謝なのです。これでムフフなお姉さま、後輩よ~の百合、たくさん書けそうな気がします!!!」
お、おい。
蒼はBL担当じゃないんかい。
「最近ジャンルを変えまして。天心さんをモデルにディープでダークな百合にしました。GW中に、人工島マジック・ダンジョンズってローカルなアンダーグラウンド即売会にて、生活費が3か月分稼げたことをここに報告するのです!」
お、お、おう。
えっと。
蒼ってそんな娘だったっけ?




