- C 1058話 もう、次から次へと... 3 -
今年の『聖女ジャンヌ』は、一味違うぜって触れ回っている。
異文化交流だっていうのに。
学内での交流が無かった神学科と、魔法科がタッグを組むのである。
2年前も組んでいれば、だ。
生徒が演じる拙いゾンビよりも、某MMORPGを制作している企業からバックアップを受けている我が校のお荷物、魔法科のデバイスを通して、リアルなゾンビ体験ができてたかもしれない話が今も囁かれていた。
「おっと、そういう繋がりなの?」
マルの口の周りにチョコが。
もう、こいつは...
ポケットティッシュで彼女の口の周りを拭ってやった。
本人曰く、
「これぐらい舐めれば」
言ってる傍から、舌先のチョコが口端から遠のいていく。
ほら、言わんこっちゃない。
「じっとしてろ」
身長差から見れば、
姉と妹のような関係性で。
あ、いや。
シャギーな髪型と容姿からすると、かわいらしい男の子かも。
マルのやんちゃな食い意地は。
エリザさんの与えるエサの方に問題があると気づいた。
先ずは元を断たねば。
◇
さて、例の火刑シーンだが。
リハーサルだと言って、蒼との蜜月を邪魔されて――会場へと赴く。
後から見学者って枠で蒼とエリザさんが入場。
遠めに見てだが。
ふたりの仲の方が縮まってるような。
『嫉妬ですか? あ、嫉妬ですね~』
面白いか、天使。
『天使は天心さんの心の友です。ハート、理解してますし一心同体です!!』
だったら、お前が変わって燃やされろよ~っ
フリだって言っても、だ。
炎は熱いんじゃなく、怖いんだ。
両親とふたりの兄貴は事故だけど、わたしの目の前で炎に包まれた。
トラウマってほどの記憶はない。
が。
やっぱり怖い。
『じゃ、チビらないよう天使が踏ん張りますね』
とりま殴っておく。
火刑台の周りにらしく見せるための焚き木の束が用意された。
一応、まじに燃えるもんで。
念の為に消火剤も脇に隠されてた。
「これは?」
万が一に点火された場合の補助ですね。
不審火?
「無いとは言えないでしょ、普段から」
な、なに。
「風紀委員に寄せられている、あなたの横暴の数々。聞き及んでいますが、あなたのような優秀な方を実力至上主義の生徒会から追放するには、ね。少し生温いと会長がおしゃっているので、不問としています。ですけど、他人の彼氏に手を出したり。屋上で煙草? 喫煙してたり...教師との不純な行為に走ってたりと――」
ちょいちょい。
待て待て、待て!!
「ちょっと待てっ」
副会長がヘビのような鋭い眼差しをこちらに向ける。
睨まれたら出てるもんが委縮して、身体の中に逃げ込んでしまいそうな怖い視線。
「NTRなんかしてねえよ!!」
「NTRとは?」
あー。
あれだ。
略奪愛?
「流行りの言葉ですか?」
さ、さあ。
「でも、他人の男なんて。いや、そもそも兄貴のと比べるとドキドキが無くなるからなあ。こう、なんつうか『あ、そんなもんなんだ』とか。聞けば一瞬で覚める恋なんてNTRするほどじゃねえだろ?」
わたしは、わたしの無実を証明したかったけど。
この発言でさらに疑惑が深まった。
「副会長という立場から言わせてもらうとですね、二葉さん、お命をお大事に」
だ、そうだ。
えー。