- C 1053話 蒼とわたし、そして... 3 -
羽虫が消えた後に残った、キラキラと。
虹色に輝く――糞。
天使曰く、
『それ、妖精たちからの最後の悪戯ですね! 愛や恋を与える神さまに仕えるとされる者たちが、いろんな歴史と伝説を紡いできました。キューピッドというのも、天使のようなコスプレと啓示を受けるまでは、普通の妖精だったんです。最近は調子乗りすぎてますがね』
で、その...糞と何か関係が?
『別に関係はないんですけど。調子に乗った若者たちの末路と似てませんか? あの脂ぎったバーコード頭の醜いおっさんどもが、最後にひねっていった汚物がキラキラと補正されている現実に』
おい。
『天界の配慮で』
マジかよ。
この幻想的で、非現実的な輝くのはエフェクトの類で補正、補完された映像マジックだと!?
しかも監修が天界で。
『いい反応です! ま、糞ですけど... 運気は向上しますよ、うん〇だけに』
やめなさい。
◇
そんな光り輝くもんに目を輝かせる子がある。
そのひとりに“蒼”がいて、マルも手折った枝にマロン型のを突き刺して――。
それ、絶対、何か知ってて突き刺してんだろ!!!
キレるわたしの反応を見て楽しんでいる様子。
マルもいっぺん、グーで殴る。
だが、そのまえに。
「会長!! あなたですよ」
光り輝く物体を頭に載せた、男がわたしの背後にあった。
運気でも上げて、輝く自分に酔ってるタイプかな。
「ふふ、いずれも花になる僕の魅力に抵抗できなくなったかい、子羊ちゃん」
身長169センチメートルにも達する、わたしに子羊ですと。
外野からは『良くてヒグマ、悪くてゴリラ』なんてのが聞こえたので、一喝入れておく。
シャアアアアッ
これで暫く、わたしは蛇女にになって。
最後はメデューサとか、ゴルゴーンだとか言われてるんだろう。
この赤い巻き毛が蛇頭の髪にでも見えてくるんだろう、な。
「ノン、ノンノン。僕は君のぼっさぼさで脂ぎってるっぽい感じの乱れた髪は好きだよ。こう、指で撫でたら、枝毛に邪魔されて。君が痛い痛いと、涙を流して泣くトコまでしっかり見えている」
あ、いや。
泣きはしないけど。
手櫛で髪を梳いて、引っ張られたら。
その場にてグーで殴り倒しますんで、お気遣いなく。
てか、邪魔すんのも大概に。
『なんて、非常識な!!』
天使さん、会長の取り巻きっ子みたいなセリフ、混ぜんのもやめて。
『臨場感出ませんか?』
「いや、逆。腹立つし、マジで天使から殴るぞ!」
腰をひねり、内股でやや膝を負った窮屈なポージングで――「僕は身長差なんて気にしない。だって、君の魅力はその“おっぱ”...」
最後まで聞かずに張り倒してた。
ま、聞いてても殴り倒すし。
耳が腐った気がする。
蒼も察したように、
「天心さんの魅力はバストの大きさではなく、懐の深さと、谷間に挟まれた時の暖かさです!! 蒼はバカだけど、ちゃんと分かってるんですよ。会長の頭の上のクソを、クソだと指摘しないやさしさにあなたは、打ち震えて反省するといいんです」
まあ、ここまではいい。
取り巻きがぎゃんぎゃん、騒いでたんだが。
蒼は最後に、
「天心さんの前に出るのならせめて、そのお粗末な胡瓜をゴーヤに育ててから出直しなさい!!」
この言葉がトドメになったようだ。