- C 1052話 蒼とわたし、そして... 2 -
わたしに直撃したチョークを拳の中で握り。
手首のスナップを利かせるよう安心の準備運動――生徒会長とは、入学当日から絡まれた名物かつ、迷惑な生き物だった。いや、これと何かの動物、生物と同義で語るのが宜しくないような、変態さんで――初日、その場で「タヒんでしまえ」と言い放ってしまったものだ。
とくに、わたしとの相性が最悪な1日だった為で...
他校、同校の女生徒にはファンが多く。
奇行さえ目を瞑れば、優良物件間違いなしなんてランキング上位に君臨してた。
魔法科に在籍してた元外務大臣の令息二名に匹敵するとか、しないとか。
ほかにも、キラキラした鱗粉めいた触媒でも飛ばしてるんじゃないかってくらい、光って見えるし。
ナルシスト特有のオーラも出まくってる。
たぶん、そういうフェロモンも、染み出してるんじゃないかな。
免疫がないのか、或いは。
わざわざ嗅ぎに行ってるのか――
迷惑な噺だ。
『なんだか意外ですね?! ひとりエッ〇の時は、変態な方々をオカズにしている天心さんなのに...もしや、同族嫌悪?』
わー。
心の叫びが口をついて、外にまで。
天使のせいだよ。
唐突に、わたしのを晒すんじゃないよ。
「びっくりですよ、二葉さん」
で。
「会長さんも、何事です? 授業はまだ終わってませんが!!」
講師の先生が未だ教室に残ってた。
あれ?
「補習させると決めたんです。二葉さんは授業日数が怪しいので、プール授業は無しですよ」
ほほ。
助かり~
『天心さんは水着ないですもんね』
裸で泳ぐつもりは無かったが。
バックレてやろうかとも思ってた。
やった! これで。
「会長さんは邪魔なんで、出て行ってくださいね。で、二葉さんはレポート書いてください」
う、うぐ。
レポート苦手...
◇
蒼との仲と距離を詰めるには共通の時間が必要だ。
仲の良い知人、旧知の中は遠に越したと、思いたい。
『大丈夫です! 天使の頭にキューピッドの矢が刺さりました!』
根拠としては薄いけども。
天使の頭を通して、わたしの頭に矢が当たった。
つまり、蒼憑きの妖精どもが一斉に、恋に落ちる魔法が掛かった矢を放ち。
その一つがクリーンヒットしたのだ。
『HPは22減りましたが大丈夫です! あと8残ってました』
瀕死じゃねえか。
そ、それは勿論、ん?
『ポーションは勿体ないので地力の治癒で』
だから、瀕死じゃねえか。
HP8じゃ、ふらふらじゃねえか?
8が0になったら、死んじゃうんだろ。
『さあ、死ぬんですか?!』
知らねえよ。
いや、なんお数字だよ?
もともと幾つ持ってんだよ、わたしは。
『93ですね』
聞きなれた数字だね。
わりと持ってんじゃねえか。
何故、減ってたのかは聞きたくないが...
『はい! 天心さんのバストサイズですからね!!』
おいっ。
レポートそっち除けで、こんなやり取りをしている。
ま、結局だが。
出席日数より、蒼と会うことを優先した。
障害っていうハードルが高ければ。
なんか燃えるし。
『留年しても知らないですよ?』
ここ最近で天使が初めてまともなことを言った気がする。