- C 1050話 キューピッドと名乗る不審者が 5 -
傷は浅いと、やや爆笑してしまったが。
蒼にケツを向けて、なんとかの三段構えっちゅー射列を組んでた、妖精に激震が走る。
なんてことはない。
わたしが流されたままに、かつて同学年の男の子とラブホに行ったエピソードのよう。
彼の自尊心を粉々に壊してしまったようなのと似たシーン。
「えっと、それ、おじさんの?」
ケツの影から皮被った先が。
見えたかあ。
絶妙に太ももで隠しちゃああるが。
そいつは少し腰が後方へ引けている姿勢だからだ。
それで、なら。
キューピッドらが恐る恐る振り向く。
ニマニマする蒼の目と、表情?
お、おや? 蒼さん。
キューピッドのおっさんらが、殺虫スプレーでも掛けられたように。
ボトボトと音ともに地表へ落下。
蒼スカートの真ん中を太ももで挟んで――
「おじさん達、おイタはよくないですよ~ 蒼は感心しません! 凍り付いて(胸元に指を立てて手が当てられ)心に傷でも負ったようなフリして。近づいてきた女の子のスカート、覗こうとしましたよね? それ...流し目でも、横目でも目端でも。女子たちには分かるんですよ? コイツ見たなって」
ちょっと怖い脅し文句。
いあ、確かに。
そういう視線は分かる。
あ、こいつ今、わたしの“おっぱい”見やがった。
被害妄想じゃなく。
俯いてても、目が。
あの目がそう語ってるんだ。
『何、喰えばそんなに育つんだ』
とか。
『彼氏に揉まれてんだなあ~ 俺も』
そんな聲が聞こえてくる、目がある。
対面の席。
新聞読むフリして、首の凝りを訴える浅ましさ。
中、スパッツかズボン履いてんだが。
それでも見たいかなあって。
逆にこっちは、さ。
イケメンでもズボンの中とか... あんま興味ないわ。
『そんな事、言って~』
お、おう、天使か。
『ほら、蒼さんの裁きが下りますよ!!』
裁き?
蒼は、地に這う妖精にトドメを刺す。
「――ったぶん、マジメに仕事している人たちもいると思いますが。その真っ当な評価も一部の腐ったミカンによって全体の評価に成ります。それが見る側の偏見なんです!! いいですか、今も必死に蒼のパンツを見ようと、這って回り込もうとしているおじさんが居ますが、下半身で考えるの止めないと、今の地位と職業、本当に失いますよ!!!」
おっと。
これは普通にお説教だった。
っマジメか!!
蒼は普通にいい子だった。
『どんな子だと』
いあ、おっとりしてるから、つい。
パンツ見られて困ってる子になると。
「天心さんなら見られても、ぜんぜんです」
ん?
助けようと駆け寄ってた、わたしの足が止まってた。
だけど...
逆に蒼がわたしの下に駆け寄ってくれて――おっさん踏んでるんだが。
両手を取って、指と指が重なり、間に滑り込んで。
「今日はすっごく賑やかですね!」
ああ。
なんか少しくすぐったい感じ。
べつにひとりで気を張らなくていいんか...