- C 1048話 キューピッドと名乗る不審者が 3 -
天使曰く。
キューピッドってのは厳密には、天使とは全くべつの生物であるという。
まあ、どっちかというと妖精に分類されて、天界の下請け業者である。
大きく分けると。
赤い運命の糸を、
「へい、彼女。暇してるかい?」的に声を掛けて、意中の有無に関係なく他人を巻き込んでいくお騒がせな、存在なのだというのだ。そのおかげで近年でのキューピッド迷惑案件は、過去最悪にまで至り。
三角関係のもつれの他に。
運命の赤い糸がもつれて修羅場みたいな事件、事故が堪えないって話。
TVで騒がれてたい芸能界のおしどり夫婦が、だ。
20も年下のアナウンサーに食指を伸ばしてつまみ食い。
果てに盛大に離婚したって影にも。
くだんのキューピッドが絡んでた。
天界では下請け業者の再選抜も検討しているって話も挙がってて。
そういうのも含めて。
わたしに憑依してた天使も天界に上がってたって言うんだけど。
そこ、まずは主語がねえ。
『どうも主語なしデュラハンです』
首なしに掛けんな。
もっと反省しろ。
◇
さて、マルのお姉さんが目撃したっていう中年小太り、脂ぎったバーコード頭の妖精だが。
学院へ登校してみれば――いつになく見える見える、なんだ、この数?! まるで羽虫の大群じゃねえか。
『言いえて妙ですけど、各国とも季節はうっすら終わりかけの春ですからね。このまま、夏に向けてとなるとパートナーがいないと、ほら、水着イベントでぼっち。魅せるボディ、揺れるパイオツに、食い込んでうっすら見えるスジとに嬉し恥ずかし、小さな丘の見せ場がないじゃないですか!!』
いいよ。
いらないよ、そんなイベント。
そもそも縁がねえし。
『また、卑屈になる。蒼さんに魅せて上げないんですか? 天心さんのエロいボディ、すっごい創作意欲が燃えるかもですし。もしかすると』
含み笑いする天使に殺意が湧く。
蒼とは健全なんだよ、そんなん、ねえよ。誰得だってんだよ。
あ~あ、恥ずかしい。
「だが」
そう。
あの子にも天使が見えるってんなら。
キューピッドも見えてるはずだ。
絶妙な角度で足の影にアレを隠してはいるけど。
蒼には見えなくとも。
『こっちからでは... 案外、ちいさいのが見えるもんですね』
感謝はしない。
ついでに天使も殴る。
言わなきゃ、わたしも見なかったはずだ。
『ゾウさんをですか? いや、マジ、無理でしょ。天心さんむっつりですもん』
こいつ。
いや。
ここは、蒼を救出する必要がある。
わたしの友達は、わたしの拳で守って見せる。
で、
天使と天使もどきと、キノコのモンスターを蹴り飛ばして、ゾンビ張り倒し。
蒼の下へ駆け寄った。