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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
天啓がありまして
2192/2359

- C 1046話 キューピッドと名乗る不審者が 1 -

 天使のやつが、勝手に買い物に行きやがった。

 主導権を奪って。

 古びたジャージ姿のまま、だ。

 ぺたんこのサンダルで。

 ちかくのコンビニへ。


 マルの姉ちゃんがバイトしてるっていう。

 よりも寄って。

 そこへ行くかね、ふつう。



「あいよ!」

 マルの姉ちゃんは、なんつうか。

 デカい。

 たっぱもヤバいってもんじゃなく、巨人。

 180はありそうな雰囲気で。

 わたしも、女にしちゃあ。

 ま、デカい方だと思ってたが――

「まったく、マル絡みか? こんなエロい義姉ねえちゃん捕まえて、だ。ジャイアントだとか、オーガみたいだとか陰口は、本人にきこえるよう囀るんじゃねえっての」

 額を指で弾かれた。

 昔は弾き方に特徴があって、その時代を表してたって聞くが。

 痛いのは変わらなくて。


 マルの姉ちゃんは、客を攻撃したとして怒られてた。

 でも。

 なんだろ、あったかい人だ。



 天使が意識がないままに彼女の下へ届けた理由がわからない。

「不思議なコトにね。天使ってのは、わりと身近に感じることがあるんだよ」

 休憩で、コンビニの裏で吹かす。

 チョコフレーバーな匂いがする巻き煙草で――

 時間の大半は、こいつを巻いてるのに使われてるような気がする。

「フィルターが無いから、肺には入れないよ? 吹かして香りを楽しむものさ、葉巻みたいなもんで葉巻よりも燃えるのが早い。普通は、事前に用意した何本かを楽しむもんだけど...」

 目元はじっと、指先にあって。

 そこから一度も外すことなく、

「こう煙草入れから、きざまれた草を取り出してならして、整えて、そして紙で巻く。吸い口に付箋紙の細いのでもつっかえにすれば、草が口の中に落ちてこない。先人の知恵だね」

 いや、どうでしょう。

 わたしは悩みらしい悩みなんて口にしてないけど。

 待ってるような。

 そんな間がある。

「で、天使だけどね」

 はい。

「最近、ちょっと変わったのが居たんだよ」

 はあ。

 え?

 どこで...

「マルらが通ってる、学院がっこ。私はさ、2~3か月前にだけど。メイドとして潜入してたんだけども――」

 え、あ? 潜入いいました?

 なんの仕事してるって。

「――小太りのおっさんみたいな風体で、あ、いや。下半身の方は短く太い足でうまく隠しながら。まあ、ゾウさんが見えないよう飛んでやがったんだが。えっと、ゾウさんからは離れてくれよ、私も思い出したくないから... で、だ。ちっこい弓もってふわふわとだな」

 火のついた巻き煙草を指に挟んで。

 こう、ハエでも払うようにぶんぶん腕を振ってて。

 えっと。

 火、落ちそうなんですが。

『それ、キューピッドのおっさんですね!!』

 天使が出た。

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