- C 1044話 気になる子が、4 -
「蒼はいつも一人なので、平気ですよ?」
なんだか吹っ切れたようなことおっしゃてますが。
その顔が、何も考えてないことを表してましてね。
ぽか~んとしてて。
「ぽか~ん」
なんて、つぶやいてる。
いやいや。
そこはもっと自分をもとう!!
「よう、彼女? 何してんの」
マルちゃんのツレが、あらわれた。
八ッ橋 エリザが、わたしの蒼に声を掛けてる。
っ、ナンパか!!
「え~とですね」
天使の袖を詰まんで、引き寄せて。
「この方を描いてました」
同人誌のモデルにするって、紙一杯に天使を描いてた。
様々な表情がある。
もはや、切り取り動画のような変幻さ。
「おお! これがマルちゃんの言ってた“中の人”か!!」
感動している方向性が違うな。
もっと蒼の絵を褒めろよ。
◇
「あっれ~ もしや嫉妬ですかあ?」
いちいち癇に障るなあ。
そうだよ、悪いかよ。
「いやあ、ラブラブは結構なことじゃないっスか」
ニマニマすんな、気色悪い。
こいつらのせいで、わたしの助走はがたがただよ。
◇
メガネを外すと、つぶらな眼がひときわ可愛らしく見える。
蒼にぎゅっと胸が苦しくなって。
こう...
『キュンキュン来るんですよね! わかります』
天使出た。
『受肉したんですから、天心さんから離れませんよ』
わたしが身体を支配している時は、存外、自由に行動しているように思える。
逆にわたしが身体の支配を手放すと――体の内側へと引き込まれていくんだけど?
『それは当然、これが(乳を指しながら)あなたの持ち物だからですよ。身体から出て浮遊してたら、死神に勘違いされて、あの世ゆきのバス亭まで誘導されますよ、マジで』
魂魄が剥がれやすくなると、より多くのトラブルに巻き込まれるという。
わたしは教室では浮いている。
いつも外ばかり見ていて、授業ではちっとも身に入っていない風に思われてるんだけど。
その意味は、だ。
窓枠に天使が腰かけているからだ。
それもキラキラと輝いた金色の巻き毛と、ふわっふわな羽毛の翼を生やした不思議な生き物で。
魅力的で健康的な四肢にみとれてしまう。
だが、きゅんとは来ない。
『そこが無念です』
なにが。
『あ、こっちにもいい女がいますよ~的な、です』
ああ。
お前はさ、気になるの意味が違うんだわ。
わたしの胸を気が付くと弄ってるだろ。
それが気になって気が許せる暇がないんだわ。
頼むから、学校でそれ、すんなよ。