- C 1042話 気になる子が、2 -
わたしの目には――。
目の前には親戚の同い年にあたる男の子らが見えてた。
みんな、家の当主の座が欲しくて。
わたしの家は。
人工島計画が走りだした頃より隆盛を誇った名家。
嫡流御三卿の筆頭家格・二葉家。
三葉に、四葉は養子を迎えた後だったんで、直流から外されてて。
残ったわたしが、宗家を継がなきゃならない。
でも宗家にある、大ババ様とは疎遠過ぎて。
なんか憎まれてて。
結局、親戚の男の子たちは。
わたし個人じゃなく、家を継ぐための条件としか見ていなくて――逃げた。
怖くて逃げた。
◇
逃げることは“悪”じゃない。
名家のお嬢様なのだから、気の身、気のままなんてことはなく。
大ババ様の計らいもあったんだと思うけど。
メイドのひとりが今のマンションと、生活費に生活に必要な諸々を手配してくれた。
最初こそは女の子ふたりの細やかに慎ましい生活が2年。
わたしが高校に上がると――
彼女は。
メイドさんだけど、アルバイト先で知り合った男性と寿退社しやがった。
わたしという主人を置いてだ。
家事の合間に、ちょっとだけ様子見に来てたんだけど。
それも半年くらい前から、ぱたりと止まってる。
片葉宗家に入らないってことで決着ついちゃったんかなあ。
◇
「ようやく大人しく、なってくれたか」
異装の子からの甘い香り。
必死に傷の手当てをして。
こう顔が近いようなきがする。
「あ、ん?! キミ、女の子???」
思わず思ったことを口走ってた。
乾いてた口なのに。
「飛沫飛ばさんでも、ゆっくり話してくれていいよ。慌てると、中身、出てくるから」
中身?
『中にいる人、です』
人ぢゃねえじゃねえか!!
「え?」
「見えるよ。ファミリアを通して...だが。すげぇー守護天使、な?」
ああ。
天使を讃えるな、調子に乗る。
『どうです? やっぱりここにきて良かったでしょ。天使が見えるひとが沢山ですよ!!!』
いや。
ここに来たのは治療が目的じゃ?
「蒼はどう、お姉さんに報いたら... 刺しちゃいましたし」
ああ、そうだ、そう、この子がいた。
メガネをかけた小さな女の子。
ひとめ見た時から。
こう、きゅんと。
『それは恋の芽生えですね!!』
そうだな。
お前が今、邪魔しなければ、な。
その気付きを自分で感じてたと思うわ。
「蒼は...」
「これも何かの縁だ! 友達から...いや、友達になってよ!! で、さあ~」
ポーションで手を洗ってる異装の子にも声をかける。
「まだ、天使が飛び出してるのか?」
「ちげーよ! あんたも、さ」
少し、気まずいが。
「こんなちっこいのは、興味ないんだろ?」
意地悪な。
「友達、なってくれ」
異装の子の目はなんとなく優しく笑ってた気がする。