- C 1041話 気になる子が、1 -
運び込まれた先が、魔法薬科部。
中学校の化学室みたいな教室で――がらっと勢いよく扉を開けたら、コニカルビーカーに妙なもんぶち込んでことこと煮込んでる最中の、ペストマスクな魔法使いたちがそこにありまして、ね?
「たのもー!!!」
蒼と言ったメガネのちっこいのが、だ。
勢いよく実験台の上に、わたしを放り投げてくれた。
「わー、ご、ご、ごめんなさい」
あ~いいよ、いい。
天使のやつが全然、手伝わねえし。
『天心ちゃんのおっぱいが重すぎて、蒼ちゃんが潰されないよう、ギリギリのとこで補助してたんよ。もーちっと労って欲しいんだよなあ~』
とか。
天使は言ってはいるけども、だ。
傷口が開くか、開かないかなんてギリギリの応急処置。
そんなん怪我人を病院ではなく、魔法科に運び込んだ理由。
◇
天使が起こす奇跡の連続って流れだ。
その世界には不思議な縁が、金色の細い糸で紡がれてるって――なんか三人の女神によって支えられてるような話があった気がする。
「それは、運命の女神だね? 一神教の教会では、他の神々は座を追われてるから、運命の三魔女とかっても言われてる。三位一体って神学でも結構、重要なワードだったりしない?」
わたしの腹に手をかざすボーイッシュ。
アラビアのロレンスめいた異装。
アホ毛が2本、触覚みたいに動いてる気がするけど――まあ、容姿は好みなトコかな。
「苦痛で夢が見れるなら、もう少し長身な... そうだなあ、わたしと同じ背格好の男の子だったら尚、良かったんだけど。(舌先で唇をぺろりと舐める)...ごめん。顔は好みだけど男の子はもっと、さ。ほら、ガッツリ肉ついてた方が好みなわけよ」
意識が朦朧としてるわけじゃない。
ただ、はっきり出もない。
異装の子が「これ、舐めてて」と、木の根みたいな棒を口に差し込んできたんで。
ソレを噛んだら。
視界が滲んで見えた気がする。
◇
「あーこら!! 噛むな、噛むなぁー舐めろってんだろがー!!!!」
わたしが噛んだ木の根は――幻覚アルクダケの足で。
つまり、ダンジョン内を徘徊している茸の乾燥させた足だった。
舐めるだけなら沈痛、麻痺効果があって。
齧ると、染み出した濃縮な液によって、口が腫れたり幻覚を見たりする。
ほ~ん。
やばいもんじゃねえか。
魔法薬科部では冒険者の高レベル・プレイヤーの引率か、顧問の先生が立ち会わないと使えない代物だというのだが。口が腫れたら、ポーションで様子見する外ない。
「にゃろー!!」
傷口が塞がってないトコで暴れる、わたし。
蒼ちゃんがみている傍で。
「えっと、蒼はどうしたら?!」
「この子の友達??? 幻覚で複数のDKに犯されそうになってる夢でも見てるっぽいんで、みんなで抑えててくれる。これじゃ、治癒魔法のひとつも掛けられないよ!!! だから、お願い」
は?
なに言ってやがる。
わたしの目は...