- C 1040話 天使と同居します 3 -
ベターな出会い。
これをテンプレって言うんだろうか。
曲がり角から飛び出してきたのは、おさげ髪の少女。
わたしに体当たりをかまして...
散らばった画材で怪我をするまでが。
わたしの展開だったわけだけども。
メガネを失くして、狼狽える彼女の可愛らしさに。
思わず爆笑してしまった。
不覚にも、だ。
いや、だって――妖怪、カオナシみたいだよ、あれ。
目が小さく、残念になってるし。
目の下から鼻の頭にまで、そばかすが。
「お嬢さん、大丈夫ですか?」
紳士的に落ちてたメガネを差し出して、キメた!
マジ、今のかっけえーだろ。
なあ、天使さんよ。
「えっと、あたしは...その、大丈夫ですけど。えっと、お姉さま、いえ、あなたの方が。ペインティング・ナイフがいくつか刺さっていますけど? あの、大丈夫ですか?!」
は?
◇
一瞬ね、死んだと思った。
そこは受肉たとか言って、わたしに憑依している天使さんが、だ。
うまく?
『こんな人前で、治癒させますか。しませんよ~そんな事をしたら、このメガネちゃんが世紀の大発見的な子にされちゃうでしょう? そこは天使だって空気くらいは読みます!!!』
いや、空気は読んで構わないけど。
じゃ、じゃあ。
わたしのは?
『う~ん(人差し指の先で顎をなぞってる)応急処置しときますね、学園の魔法科で治癒できる人に頼んじゃいましょう!!』
おーいー。
マーカス王立魔法学院ってのが、わたしが通ってる学校法人名。
人工島屈指の最難関な私学で。
本国・本島の最高学府へ卒業生の4割が合格しているという、名門校ではある。
ただし法人名が、アレで。
色物っぽい変なのがある。
例えば――
魔法科だ。
これだ、これ。
これのせいで間違いなく、ネジが飛んでるイメージが定着してて。
島内の底辺であれなレベルの高校にもバカにされて。
進学率や就職率も毎年、高いにも関わらずゲテモノ扱いだ。
通ってるわたしもそう思ってた。
「魔法科?!!」
思わず誰もいないとされる方向に突っ込んでた。
わたしの視界のソコには天使が浮かんでて...
「えー!? て、て、て、、、、」
『ちょ、落ち着こう。落ち着いて、深呼吸しよう!』
天使がメガネちゃんの小さな肩を掴んでほぐしてる。
おやおや?
「これ、見えるの」
「あ、はい。で、おなか、、、大丈夫ですか?」
あー。
ごめんダメだ。
気を抜いたらなんか、さ。
暖かくてヌルっと体液出てきたっぽい。
『わー、それ血だよー』
「それ血だーって言ってます。じゃ、じゃあ、蒼がお姉さんを担いで魔法科に駆け込めば」
あ、いいの?
ちょっと重いけど、天使に手伝ってもらって――オナシャス。