- C 1037話 ぷろろーぐ -
夕飯は、チップスに弁当の余り物。
学校の食堂に忍び込んで、廃棄が決まってた“総菜パン”らを拝借してきたもんで食い繋いで。
確か、3巡目のダンジョンアタックが終わったのは...午前4時。
筋肉くらいは付けた方がいいよ?とも言われかねない細腕が伸び。
見てくれの悪い時計を掴む。
「あ、8時か」
目覚まし時計としては死んでるけど。
時を刻む道具としてなら、ゴミ置き場から持ってきたもんの中では、いっとう上等な代物。
「起きなきゃいけないけど」
かったるいなあ。
このまま仮病?
いあ、それは何度も使えないし。
この間も11回も死んだばあちゃん出したし。
「信じて貰えなくなるからなあ」
憂鬱。
早く楽になりたいなあ。
◇
桜散る、今日この頃。
陽光が頭頂部のつむじを焼くほど高く上がった頃に登校する。
「やあ、みなさんごきげんよう」
生徒会・風紀委員長のわたしが。
重役出勤っぽい登場を決めたところで、教室がぴりっと戦慄したとこ。
『ああは、なりたくないものね』
他生徒からの耳の痛い陰口が聞こえ。
担任教諭のチョーク先が、ちょっと震えてたかな?
「二葉さん、席へ!!」
「はいはい、分かってますって。えっと、今日はどこの席が空いてるかなあ?」
教室といっても、神学科のソレは他の教室のスタイルとは違う。
長椅子に座ってそれぞれの背もたれに誂えた、収納ラックに神学書が入ってる。
神学書は価格的に高くはないけど。
どうも、この学校の伝統のようで。
買わなくてもいいという点では、わたし的には非常に有難い制度なんだけど。
「ちょ、ここの本がっ。どこにも無いんだけど!!?」
お嬢様学校のような、清貧と品性を高めなさいと教授する面がこの学校にはある。
科別にやや、考え方が違うようだけど。
わたしの神学科には、あった。
「お静かに!!」
担任教諭の手を止めたのだから、額に皴が寄るのも仕方がない。
「無いなら、どなたかの本を見せて貰いなさい」
はああ~
またこんな時代錯誤な虐めか。
教室ってトコは共通の敵を作りたがる。
きっかけは些細なものだが。
足並みが揃わないと、多を優先する。
なんなら多が纏まるための道具にもする――『我慢にも限度があるんだよなあ~』
そっと、教室を出た。
入るときは堂々と、抜け出すときはこっそりと。
今更、わたしが居なくてもあの教室は問題なく歩いてく。
ああ、友達、欲しかったなあ~。