- C 1035話 嘘も方便 5 -
魔法科の3年生の顔ぶれに変化が。
先の騒動により、進学できなかった――あるいは実家や環境のせいで、少年AやBとして学校を離れていった子たちが少なからず存在したことだ。
また、人工島に根を張る報道機関にも、報道協定が結ばれて。
子供たちの行く末を魔の手から守ったトコ。
そんな中で、だ。
1学年に必ず必須で存在した、聖女とその取り巻き立ちの姿だが。
ボクたちの学年だけファミリアのAIがまた、壮大な計画を紡ぎだしたところ。
◇
マーシャル王の双子の王子は揃って、聖女に扮した魔女の甘言に惑わされ、身に宿した“悪感情”に振り回され自滅。悪役令嬢と冷遇されてきた“ルージリー公爵令嬢”が王国再建に動き出す――なんてノリの物語へと舵を切ったところ。
今、現在の。
ファミリアが魅せる仮想世界のマーシャル王国は、聖女を欠いた国家運営に上も下も大混乱。
いや、すご~い大展開だと思うわ。
学校運営のために奔走したバンビ先生や、コジュ先生らは。
物語上では魔女の手先として描かれて投獄されたり、追撃されたりしてた。
ま、確かに。
今もどこかを彷徨ってるとか言われてるね。
警察の方はアンダーグラウンドへ逃げ込んだんじゃないかって。
これに懲りて。
もう悪事に手を染めないでほしいと思う。
さて。
AIの語りは終わってない。
聖女の行方だが――教会に保護される前、魔女たちの手下により落命していたという。
うーん。
リアルだなあ...
そこは、堅苦しい聖女の運命から逃げ出したとかすると。
いあ、これもある意味リアルすぎるか。
「この語り、スキップできないかなあ?」
おっと、ボクの手を手汗でびっしょり濡らしてくれてるエサちゃんが物騒な言葉を。
何度か、スキップを試みた上での暴言で。
その度に『エリザさんには教育が必要です!!!』と、AIからの教育的指導が与えられてた。
それはやり過ぎだと、抗議したら。
ついでにボクも電気イス攻撃喰らってるとこ。
鉄拳制裁は断固はんた~い、はんた~い!!
語り部の締めは。
このガキどもに幸あれ...
だった。
AIも悪態をつくようで。
「最後は、ぼくたちの戦いはこれからだー的な陳腐な終わり方で、草しか生えない」
どこで覚えるのそんな言葉。
「主に昔の動画」
「頭のいい子なんだから、そんなトコで暇をつぶさない」
エサちゃんの口が尖がってる。
ボクは周りの視線が痛いんだけど。
「じゃ、マルちゃんがわたしの暇を握りつぶしてよ!!」
囃し立てる口笛が聞こえてくる。
ああ、もう。
っ、任しとけってんだい!!