- C 1034話 嘘も方便 4 -
「八ツ橋が失踪した少女を探してるなんて、デマでも流せば。エサちゃんだって狙われかねないんだよ」
彼女の髪をくしゃくしゃに乱して――
瞼をきゅっと真一文字に閉じながら、ボクの説教に付き合ってくれる姿を見てたら。
なんだろうなあ。
可愛くなってきて...
これで説教をやめることにした。
「でも、無事で良かった」
人工島の治安はこれで少しはナリを潜めるだろうし。
地下勢力の構図が変化することで、新たな勢力が台頭してくるかもしれない。
事後処理だと残った傭兵も。
ボクらの近くで縄張りを...
とりあえず帰る場所の安全は確保できるはずだ。
くしゃくしゃな頭のエサちゃんが。
上目遣いにボクの懐にて潜り込んできて。
潤んだ瞳を輝かせ――
「な、なに?」
ちょっと悪い予感しかしないんだけど。
「じ、じつはですね」
「もう、この後、中退の手続きとかで忙しく」
そうでしょうと、エサちゃんがこくりと頷き。
微妙に不安なボクの喉が、ごくんと鳴る。
「お爺ちゃんからの伝言で」
「...(聞くだけきいてやんよ、ボ、ボクは寛大だからね)...」
「引き続き学校に残って。っ、最後まで...卒業しちゃいなさい、と。もしも、お願いを反故にして中退するってんなら、寄付金の全額返済が条件になりますって、話なんだけど?」
は?!
マジかよ。
待て待て。
寄付金は、編入支度金とは別に用意されたものだ。
殆ど、この作戦の生命線とも言えたはずで。
えっとそれは経費で。
「経費は無理だろ」
ハナ姉がぽつり。
傭兵団の事情は知らないはずだけど。
ハナさんだけにハナが利くようで。
「知りもしないで!」
「知らんでも、寄付金は数百万じゃなく、数千万単位だろ!? マルは中退のままでは惜しい人材ってことなんだろ。出来ればマジに身分保障目的でも学府へ、行って欲しいという親心のように思えてくるが? その気がなくても高校だけは出てOK!!」
そんなダジャレ言う人には成りたくないんですけど。
いや、エサちゃんと通いたくはないわけじゃない。
なんか色々と面倒じゃん?
本職とか。
「傭兵の仕事は当分、回ってこないさ。条件は学業優先であれば、な」
十恵ちゃんが扉の梁に寄りかかってた。
この人も学府で講師している身分だし。
どっちが副業かわからない人。
「えっと、この学業優先は... もう決定事項だったりする?」
エサちゃんがしがみ付いてくる圧も受けつつ。
あ、やわかいゴムまりが腕に。
「完全にじゃない。結局のトコ、選択はマルが持っているから、お前が決めることだ」
だよね。
魔法科は4年制だけど、最初の1年は補助輪付きのチュートリアル期間。
システム上はスキップもキャンセルもできない時間だったようで。
他の学科...
進学特待科や、神学科、普通科に声楽科とか学校自体は面白いところらしい。
ま、そういうことなら。
やや、肩から力を抜いて。
「そうだなあ~」