- C 1032話 嘘も方便 2 -
刑務所長と守備隊長の救出を終えた時点で、傭兵たちの作戦は終了した。
自治政府のある高官や他方の省庁からは、(折角出来た)接点を残す形でしばらく(ボクらの)上司と長いような、短い会合がもたれて。
結果、観光客に混じってぶらぶら帰還するよりも、しつこくこびりついた汚れのように。
事後処理まで付き合うよう命令が下って、戦友、愚痴の一つも呟きながら復唱してた。
と。
戦友とボクの学園生活は、ソコで終わるはずだったんだけど。
で、
ボク自身のお仕事モードは終了する。
鏡の前に立ち、
すっと瞼を閉じて――「おつかれさま、ボク」
彼女と暫しの別れを済ませたら。
いつものマルちゃんの凱旋だ!!
ちょ、
「エサちゃん? すみませんが何処に顔を埋めて」
部屋に戻ってきた時、周辺に人の気配はなかった。
儀式の前後も、隣の部屋だけでなくこの寝室にも気配はなかった。
じゃあ、どこから?!
「窓からだけど、やっぱいつものマルちゃんだー!!!」
いつものじゃなーい。
◇
エサちゃんが顔をずっぽり埋めてるのが、ボクの股下。
このまま膝を軽く折って、こう、左右どちらかに捻りでもすれば――ぽくんっ乾いた音とともに目の前から火花が散った気がする。やっと現れたよ、学生寮のボクの部屋をずっとひとりで管理してた、ハナ姉の方も凱旋。
やっと来てくれたけど。
なぜにボクの頭を叩きなすったんで?!
「ほう? その折った膝と内太股で挟んでるエリザお嬢様のやわっこい細首を、ポキッと捻り折ろうとしたつもりはないと、そういう事かな我が義妹よ!!!!」
や。
それはボクの秘密の花園に顔を埋めてる、この人が悪いのでは。
「いいか、マル」
「はい?」
ハナ姉はファッション誌を丸めて。
ボクの肩に、胸に、腹を突いて――
「お嬢様はそれはそれは、ご心配なされて。昼寝の中でもうなされながら、マルの無事の帰還を願っていました(どうも胡散臭いけど、静かに拝聴しないと乳〇を突つかれてしまう)...そんな健気なお嬢様の唯一のお楽しみが」
「この変態行為だと?!」
バトルドレス・ユニフォーム定番のカーゴパンツからでも伝わる鼻息の荒さ。
しかも生暖かい吐息まで感じられ。
非常にハズい。
これ扉半開きだったら、寮生仲間に見られ――『パールライス子爵様もお年頃ですってよ』なんて人聞きの悪い噂に。
いや、いやいや『ルージリー公爵令嬢と密会!? 異国のパールライス子爵が姫と駆け落ち』なんてことも。
エサちゃんの友人たちは、噂好きで叶わない。
あ、そうだ。