- C 1030話 プリズンブレイク 5 -
監獄島を包囲することは難しく、正面にとびっきりの装甲の厚い戦車を有事でもないのに持ち出したとこまでが、自治政府が掲げる自治憲章で誤魔化せるギリギリの解釈。かつ言い訳で、人工島に棲むすべての人々に向けたアピールなのではないかと思う。
選挙権はあるけど。
未だに行使したことはない。
ハナちゃんと、十恵ちゃんは納税の義務とともに選挙に行って。
与党シールを胸に張ってた時があった。
ちなみに、人工島の少年少女は15歳になった暁は、選挙権の資格が与えられる。
本国は今でも18歳からだけど。
本島の人口比率から考えれば。
おっと。
その話はいいか。
◇
政府とヴィランたちの間で忙しなく交渉が行われ。
ボクらは情報の収集が責務となって――すでに半日経過してた。
「こちらに動きがあるとけん制で攻撃が来る程度だが。あちらの本気度が交渉だけと言うのが解せぬのだ。護るのに適してはいないだろ?」
監獄島を攻略する場合は、正面火力だけで押し切れる。
現実にヴィランはそうやって突破した。
同じ手口はすでに封じられていると見て動くと。
人質を無視して動く必要はあるんだけど。
「時々、流される放送を無視することは出来ませんよ?」
交渉も含めてけん制としての動画公開。
人質は無事だという証拠の映像だが。
これが足かせにもなっている。
「防衛大臣からです」
ランプが光っただけの電話。
呼び鈴が鳴らなかったのは、立て籠もっている連中にも情報を与えないだけだろう。
「閣議決定した結果だけを伝える。我々の目的はマフィアの速やかなる排除と解体だ! それで彼らが人質を解放するそうだ」
見返りは?!
「いや、彼らもマフィアと関わることがこの時点で、終いにしたいのだそうだ。まあ、なんというか上手に使うことが出来るならと、打診はされたが。我々も今回のような事がない限りは、外部のコンサルタントに頼むことはない」
ボクらのことだろう。
人工島自衛隊の皆々さんもこっちを見てきたし。
「大臣、そこのコンサルタントの方々が近くにいますよ?」
「分かった上で、そういう話だ。君らも聞いての通りで、今回だけの特例だから今後は人工島に砲撃したら、構わず沈めに行くからそのつもりで、な。...っ、それと埠頭への過剰な攻撃は誰に請求したらいいんだ?」
大臣の喚きと同じくして、スピーカーの奥に秘書官があって。
彼から厳重に忠告されてる声が漏れてた。
納得していない政治家がまだいるってトコの話。
「...っ、先ほどはつい、口から出た聞き流してほしい。刑務所から何かしらの合図があるそうだ、それをもって状況終了ということだそうだが...聞き分けが悪いってことは?」
あんたじゃないんだから。
現場は理不尽を臓腑の底に押し込んで納得できる生き物だ。
それは傭兵も同じ。
――合図は、花火か照明弾かと思ってたら、爆発だった。