- C 1028話 プリズンブレイク 3 -
重犯罪者刑務所とは、別名『奇岩城』と呼ばれた隔離施設である。
北東の岬から、かつては陸続きの人工島建造で使用されていた、資材搬入港のことだ。
建造後は進水式を経て、搬入港は孤立した島となり廃れた。
そんな立地の再改修後の姿が。
現状、脱獄不能施設『奇岩城』へと変容したわけだ。
陥落した現時点においても、一度収容された犯罪者が外に出た記録はない。
さて。
この施設の事だが。
地下4層、地上5層の9階建てで、収容サイズは1万6千人の規模を誇る。
看守と守備隊の独立管理棟は4千人の収容が可能だが、犯罪者の人口はサイズの10分の1ほど。
看守が500人で、守備隊は200人常駐してた。
職員の雇用状況は、タスクフォース選抜隊と同じように。
天涯孤独の身の上である必要があり。
特殊な条件だった為、必要な規模の人員が集まらなかったわけだ。
併設された管理棟内には、各人ともに2DKクラスの個室が当てが割れ、地方?から転任してきた妻子づれでも、同施設内には学校や商業施設も一応、揃っていたのだけど。
利用者はあまりいないらしい。
人工島自治政府の頭の痛い話のひとつ。
運営には血税が注がれているのだが、じゃあ、要らないっすね。
で凍結すると、これはこれで公務員である職員たちが怒り出す。
儲からないけど必要な施設管理というのは、難しい。
◇
では、状況に戻ろう。
進水式後に不要となった搬入港の立地に架橋で地続き化した、監獄島だが。
人工島自衛隊の戦車を押し出し、防弾楯として正門に張り付き。
銃撃の雨の下を掻い潜りながら。
「リーパーズ、要請に応じて参上しました」
十恵ちゃんが隊を代表して陣地に声を掛ける。
敬礼とかすると、返礼した者が狙撃されるので略式を採ってるし。
相手も頷きもしないで素気無い返事だけ。
死角になる場所で状況の確認が行われてるっても。
砲撃とかされたら、みんな仲良くあの世行きだから。
「ここの指揮は(戦車のケツを叩きながら)これの中にいるヤツだが。同じ傭兵としてヴィランの連中はどこまでの事ができるか知っているかね?」
ヴィランフォースとしてなら、そんな名の傭兵は知らない。
頭のネジが飛んだサイコパスなスタイルを売りにしている輩となると、そう多くもないし。
とくにヤバいとなると。
鉢合わせたわけじゃない。
本国の国防軍が紛争地で出会ったパターンが有名だろう。
一方は国連監視団として赴任。
基地設営に従事し、昼夜の歩哨に神経を削ってたという――その際、羊飼いの青年やボールで遊ぶ少年に対して、傭兵は銃撃を仕掛けていたという。ご近所なので、問い質しに赴くと傭兵らは、青年の次の行動に対しての賭けをしていたというのだ。
「なんて奴だ!!!」
「まあ、紛争地ではあってもそういう常識が過りますよね」
その羊飼いは“神風”を狙ってたのだと後日、わかる。
ま、腹に括りつけた砲弾が重たかったのだろう。
躓いて地面に落として自爆。
「知ってたのか?」
「さあ、だとしても遊ぶ必要はないと思いますが」
怪しいからと不用意に近づくこともできない。
「われわれもクライアントを守るためなら、狙撃しますけどね」