- C 1027話 プリズンブレイク 2 -
ボクたちが反政府活動家に襲撃され、それらを手際よく巻いてやった直後。
人工島の自治政府に激震が走る。
簡単に言うと、マフィアのボスたちが収容されている、重犯罪者刑務所が襲撃されて。
難攻不落と謳ってた施設が陥落したという事実。
さらに最悪なことに。
施設職員と特殊武装警察隊の生存者が複数名、人質にされているというのだ。
ほうほうの態で逃げ回って、マーカス王立魔法学園に帰還できた傭兵らに再び白羽の矢が立つ。
いや、なんでって話だ。
仲介人として立つのが四ツ橋 かがね、その人で。
エサちゃんとは親族だという。
まあ、ボクと十恵ちゃんみたいな関係だな。
「自治政府からの追加オーダーです」
後ろ手に腕を組み。
線の細い雰囲気があるのに、こう目が離せない鋭利さを感じる。
殺気ではないけど。
「かがね姉さまはね、四ツ橋警備保障で働くオフィスレディーなの!!」
無邪気なエサちゃんは珍しいけど。
そんな、OLには見えませんけど。
むしろ...
「詮索はしないで頂きます。姪っ子の夢も砕かないように」
あ、やっぱり。
エサちゃんは察してないけど。
ボクと同類かよ。
◇
八ッ橋が用意した車両は、バス。
50人は余裕で乗れる大型の方で――窓は二重で、防弾仕様。車体はセラミック製の特殊装甲のようだし、部下の何人かはモジュラー装甲じゃないかって疑ってた。まあ、それなら6輪のこのバスはさながら『回送』中の路線バスを模した装甲車両ってことになる。
そんなに物騒なトコへ行くんですかい。
「依李紗が変なコスプレしているからね。こっちも、それなりにこの子を守る義務があるわけよ」
まあ、守られてるばかりのエサちゃんじゃないから、お姉さんに反論して食ってかかってみたけど。
「言いたいことはわかるけど。依李紗は八ッ橋家の血統を次代に繋ぐ大切な人材なわけ。若いうちだから方々で遊んでても構わないけど、いつかは家に従わなきゃならない。御爺さまの意向には逆らえないけどね」
ちらっとキツイ視線がボクに刺さった。
司馬 丸恵が男の子ならば少々、やんちゃが過ぎても大目に見てもらえたかもしれない。
いあ、八ツ橋グループの人々に、だ。
「...どうしても、コレじゃないとダメ?」
ボクに刺さる指。
ぐりぐり抉ってくるような指圧を感じつつ。
が、
ぴたりと止まった。
ハナちゃんよりも、十恵ちゃんが指を掴んでた。
おっと、お姉ちゃん同士の戦いか?!
「うちのマルは大人しくて、寂しがり屋な子なんだ。コレと呼ばれる筋合いはない」
生活のほとんどを、八ツ橋に支援して貰っているごく潰しですけどね。
まあなんていうか。
プライドはあるんですよ、それなりに。
「なら、その従順さを追加オーダーで遺憾なく発揮して貰いたいものだな?」
宥めるエサちゃんの声もむなしく。
現地に到着すると。
銃弾飛び交う戦地に送られてた。
おっと、ハナちゃんとエサちゃんは、かがねさんの監視の下に拘留されてた。
ま、それはそれで結果、オーライだわ。