- C 1026話 プリズンブレイク 1 -
マーシャル王立魔法学園と、麻薬取締局との戦いは終結した。
関係者の捕縛は頓挫することにはなったけども、聖女に扮してた養護教員と、一部の生徒が関与してたのだと自白したからだ。社会福祉に従事することで罪状の軽減処置が施されたようで。
「甘いなあ、自治政府は」
完全武装かつPDWを抱えたボクの愚痴。
やっと普通にヒキニート出来ると思ったら、後始末が待ってた。
ゲームみたいな甘酸っぱい学園生活も、これで。
袖を強く引くエサちゃんがある。
「なんでげしょう?」
「なに、その口上?」
はて。
気分かな。
「お爺ちゃんからの伝言。学校には行くように、だって」
え。
ヒキニートは?
「卒業じゃないかな。ハナさんはコンビニでバイトでしょ? ちゃんと働いてるし、十恵の叔母さまも。今回は少ない有給を取らせてしまったから、お爺ちゃんがお給料奮発するってので、報酬交渉が終わってるわけ」
あ、はい。
で、なぜにボクは学校に?
「中卒の傭兵ってなんか、八ッ橋の婿に相応しくないからだって。まあ、、わたしは別にいいと思うんだけど~残り2年間、マルちゃんと教室でいちゃらぶするのって憧れるじゃない?」
そっちかあ。
まあ、どんどんお姉さんみたいな体形になってく、エサちゃんを見守るのも悪くはない。
頭の後ろに乗ってた感触とか。
重さとか。
ボクの指がわきわき動く。
「もう、なに想像してんの、よ!!」
理不尽に殴られた。
革手袋をグーで握りしめた拳でだ。
ほぎぁぁぁ...
3,4年前までなら。
アバター通りにミニマムな幼女然としてた、エサちゃん。
急に背が伸び大人っぽくなり、“三日会わざれば刮目して見よ”のような状況になった。
ボンで、きゅっとでボンのナイスなスタイルへ。
ハナ姉ほどの長身じゃないけど。
おそらくは...
◇
傭兵らの専用スーツはそれぞれが特別だ。
本拠にサイズ表を送って製作される。
その後は数年が試用期間となって、それぞれの独自仕様が内蔵されていく。
例えば――司馬 丸恵の場合は、近接格闘戦に特化して作りこまれていた。
表に見えるナイフの数は4本。
隠し、投擲まで含めると20本以上はある。
武器の収納だけじゃなく、人工筋繊維によって筋力の増加と。
タイミングよく収縮させれば拳銃弾さえもパリィできるようになる、攻防一体の鎧だな。
で、だ。
「なんで、そんなエロいボディスーツ着ているの、エサちゃん!!!!」
グローブ越しにグーで殴られたときに気が付くべきだった。
PDWを抱えるボクと同じ場所にいることに。
「マルちゃんだけじゃ心配じゃない。下手したら、どこででも寝ちゃうし」
寝ないよ、すぐにはね。
それに警戒心くらいはあるよ、ボク。
「そんなにエロいかな」
身体の線は普通、見えないものだけど。
装備品がボクの背負ってるバックパック頼りだと、たぶん。
「ま、ハナとお揃いで尻のライン丸見えは、まあ目のやり場に困るわな」
十恵ちゃんからぼやきが。
「あんたら二人は、上着、着ていきな。じゃ、なければ装甲車でお留守番だからね!!」
ボクが率いるのはあくまでも10人程度で。
十恵ちゃんは全体の指揮官。
怒らせるとすっごい怖いんだよなあ。