- C 1024話 地雷王子、散る 4 -
学園の空に黄色い花火が上がった。
黄色い煙の尾を引いて、天高く舞い上がるソレは甲高く鳴く――宰相令嬢の妹が救出されたという意味の花火であり狼煙だ。傍から見れば、奇麗でもないしひょろひょろと、情けなく頼りなく。蒼天ほどには遠く及ばないものの4月を迎える空のわりに、入道雲も見える南国の高い蒼。
こんな異常気象で、季節感がも何もないけど。
あえて言えば...
「ばっちい色で揚がっちまいやしたねえ~」
って姿なき者の愚痴でも聞こえてきそうだ。
◇
そんな春でもない蒼の下で。
また別に――。
愚弟にフラれた少女が兄の下に現れる。
双子で役得な立場なら、普段から愚弟だとあざけり罵られてる方だろう。
比較対象がないとき。
彼はプレイボーイな“兄貴”を演じている。
別れた少女と距離を取るための最善策化のように、だ。
そしてただ芝居でも見せるかのように、どういう文言でフッたかは一言一句、自分の言葉を覚えているから、まるで台本でもあるかのようにスラスラと告げた。
そこに罪悪感の翳の一つもなく。
愚弟が兄貴になりすまして喰っちゃったという態のみ。
彼なりの最高の自作自演だが。
己に心酔している者は気が付かない。
「ふん、俺は初瓜にしか興味がないが、どうしてもと言うのであれば。寛大な俺サマは...」
口上が終わらぬうちに、少女が青年の懐へ飛び込んでた。
やや強引に、直立不動で開脚してた彼が、一寸後ろに下がった感じがした。
そして、悲鳴――通りすがりの少女Zさん、19歳。
卒業アルバムを生徒の代表で受け取りに来たところで、凶行の目撃者となる。
不同意性行為に及ばれた、少女が青年から飛びのくと。
そのままキラリと光る獲物をもって駆け出して行った。
嗚呼、無念。
心酔して悦に入ってた2年、シャルル・オスナージュ役の少年が凶刃に倒れたところ。
「あ、あ、あ、、、、」
ちょっと、流石に誰か助けてあげなさいよ。
ここで日ごろの行いが顔をのぞかせるんだ。
顔から血の気が引いて、がっと開かれた瞳から涙があふれ、光を失いかけたところで。
再び誰かから名を呼ばれて蹴られ、叩かれて、起こされる。
まあ、そんなのを繰り返しつつ...
救急車が学園内に入ってきた――。
◇
地雷王子は、逃亡を終えたボクのところへまっすぐ。
匂いでも嗅ぎつけたように現れた。
突き放してから会うことも避けてきたけど...
少し見ないうちに精悍にでもなったか。
「男子、三食食わぬも! だ」
何言ってんだか。
あ、もしや...
三日会わざれば刮目して見よ、か。
何かとごちゃ混ぜになってるけど、この学園の入学試験は人工島いち最低ラインってたなあ。
まあ、あれだ。
普通科はマジで難関校だし、3年制のただただ普通の学校だ。
遊んでわいわいヤるのが魔法科ってだけで。
「どうだ、この筋肉!」
まだ付いてきたばかりだから、ボクの目でもまったく見えやしない。
近視の初老みたいに目を細めて難しい表情になってるはずだよ。
「以前のような負け方はせんぞ!!」
あ、はいはい。