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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
人工島の寄宿学校
2170/2359

- C 1024話 地雷王子、散る 4 -

 学園の空に黄色い花火が上がった。

 黄色い煙の尾を引いて、天高く舞い上がるソレは甲高く鳴く――宰相令嬢の妹が救出されたという意味の花火であり狼煙だ。傍から見れば、奇麗でもないしひょろひょろと、情けなく頼りなく。蒼天ほどには遠く及ばないものの4月を迎える空のわりに、入道雲も見える南国の高い蒼。

 こんな異常気象で、季節感がも何もないけど。

 あえて言えば...


「ばっちい色で揚がっちまいやしたねえ~」

 って姿なき者の愚痴でも聞こえてきそうだ。



 そんな春でもない蒼の下で。

 また別に――。

 愚弟にフラれた少女が()の下に現れる。

 双子で役得な立場なら、普段から愚弟だとあざけり罵られてる方だろう。

 比較対象がないとき。

 彼はプレイボーイな“()()”を演じている。


 別れた少女と距離を取るための最善策化のように、だ。

 そしてただ芝居でも見せるかのように、どういう文言でフッたかは一言一句、()()言葉せりふを覚えているから、まるで台本でもあるかのようにスラスラと告げた。

 そこに罪悪感のかげの一つもなく。

 愚弟が兄貴になりすまして喰っちゃったというシーンのみ。

 彼なりの最高の自作自演だが。

 己に心酔している者は気が付かない。

「ふん、俺は初瓜にしか興味がないが、どうしてもと言うのであれば。寛大な俺サマは...」

 口上が終わらぬうちに、少女が青年の懐へ飛び込んでた。

 やや強引に、直立不動で開脚してた彼が、一寸後ろに下がった感じがした。


 そして、悲鳴――通りすがりの少女Zさん、19歳。

 卒業アルバムを生徒の代表で受け取りに来たところで、凶行の目撃者となる。


 不同意性行為に及ばれた、少女が青年から飛びのくと。

 そのままキラリと光る獲物をもって駆け出して行った。


 嗚呼、無念。

 心酔して悦に入ってた2年、シャルル・オスナージュ役の少年が凶刃に倒れたところ。

「あ、あ、あ、、、、」

 ちょっと、流石に誰か助けてあげなさいよ。

 ここで日ごろの行いが顔をのぞかせるんだ。

 顔から血の気が引いて、がっと開かれた瞳から涙があふれ、光を失いかけたところで。

 再び誰かから名を呼ばれて蹴られ、叩かれて、起こされる。

 まあ、そんなのを繰り返しつつ...


 救急車が学園内に入ってきた――。



 地雷王子は、逃亡を終えたボクのところへまっすぐ。

 匂いでも嗅ぎつけたように現れた。

 突き放してから会うことも避けてきたけど...


 少し見ないうちに精悍にでもなったか。

「男子、三食食わぬも! だ」

 何言ってんだか。

 あ、もしや...

 三日会わざれば刮目して見よ、か。

 何かとごちゃ混ぜになってるけど、この学園の入学試験は人工島いち最低ラインってたなあ。

 まあ、あれだ。

 普通科はマジで難関校だし、3年制のただただ普通の学校だ。

 遊んでわいわいヤるのが魔法科ってだけで。

「どうだ、この筋肉!」

 まだ付いてきたばかりだから、ボクの目でもまったく見えやしない。

 近視の初老みたいに目を細めて難しい表情になってるはずだよ。

「以前のような負け方はせんぞ!!」

 あ、はいはい。

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