- C 1022話 地雷王子、散る 2 -
ボクたちの学年の聖女クランは普段、顧客管理という仕事に従事している。
学園の闇に付かず離れずの関係で関与し。
腹違いの妹が人質に取られている、少年の仕事は流通量の把握。
最近、売り上げが芳しくないとの報告だが。
これは地下組織が取り扱う競合商品のせいだ。
誰もが混同している状態で、かつ愛称も寝取られたせいで“麻薬”と呼んでいる始末。
かつて生徒の誰もが、“恩寵”を無意識に使っていた。
ダンジョン攻略や。
難問を解く勉強の合間に。
仮病で籠って3徹のゲーム攻略にも使われてた。
そう、その敷居はとても低かったのだ。
全寮制という特殊な空間だからこそ。
生徒たちは“いたずら”くらいの認識で、手の染めるスリルを味わってた。
ただ、中毒になると。
そうも言ってられなくなって。
眠気や不安に打ち勝つためにってより強い興奮剤へと手を染めていく。
自己防衛のハードルが下がっているから、地下組織からの誘惑も――学園の中だったからって疑わなくなっている。いや、その判断力はバンビ講師やコジュ講師、養護講師が長い間で奪っていったものだ。
だから...
より強力なハイな精神状態へと誘導なってくれる薬に流れている構図で。
リピーターたちがどんどんNTRされているという。
◇
双子の王子ロールのふたりだが。
王太子のロールは父親の期待を受け止めている長男が、弟から横取りしたものだ。
双子だから機会は均等に与えられるべきって母親の方針と、世の中は理不尽で出来ているから奪い取ってナンボという父親の方針で対立した家庭環境で育ってきていた。
甘いマスクと何でもデキる兄は、母親の愛も独り占めできる。
対照的な、弟にも兄が苦手とする分野で、きらりと光る才能があった。
ただ、世の中は理不尽で出来ている。
棲み分けされてたところにも兄がやってきた。
この学園の入学はそんな兄から逃れるための避難場所だったんだけど。
『気になってる令嬢が入学するって話を聞きつけたんだ!! 俺の明るい未来のためにもさ。弟は兄を支えてくれよ、な?』
これが長男が次男から王太子ロールを奪った時の言葉だ。
ネタの塊みたいな学園に通わなくてもいい兄貴の我儘。
それを赦す両親たちの愛。
「――配役は、俺の」
機会は均等にがモットーな母親でも顔をしかめて。
『お兄様のステージでしょ? あの子の晴れ舞台を飾ってあげましょう!!』
少年はやさぐれた。
出涸らし扱いされ続けて逃げるチャンスも奪われた。
ずっと、引き立て役だ。
兄のための。
「(額に手を当てて)...っ、何言ってるんだか分かんないけど。気晴らしになるなら、打ち込みの相手にはなってあげるよ。ただ、こっちも然程、暇じゃないし。必要単位は取らなきゃで、暇な時間を作るためにダンジョン・アタックしなきゃだから...その、ね。合間だったら、だよ」
ボクも地雷王子に深く関わるつもりはなかった。
だって、しつこく絡んでくるから。
突き放すつもりで、その。
声を掛けただけなんだ。
そのはずだった。