- C 1015話 アンダーグラウンド・ゼロ 5 -
地下での惨状もそうだけど。
地上での惨状もかなりヤバイ。
中央駐屯地の主兵力は、対人制圧力に特化している。
ま、聞こえはいいけども。
ざっくり言うと、警察が保有する機動隊より少し火力高めな具合。
およそ本国のテロ対応チーム並みだろう。
そんな基地に、だ。
手製とはいえ殺傷力が“鬼”がかった、擲弾筒が投げ込まれていた。
破裂すると、弾頭に仕込まれた釘やらビー玉、砕けたガラス片が飛んでくる。
爆心地に近いとショック死するほどの致命的ダメージを負うし、離れていても士気が落ちる。
痛みっつうのは、そういうものだ。
女の子は男の子より鈍いんじゃなく、頑張れるだけで。
痛いのは一緒で。
近くで喚かれると、すっごいイライラする。
「もう、いちいち騒ぐな!!! ちんちん付いてんでしょっ!」
柔らかいところに刺さってる直上の先輩を担ぐ女性兵士。
膝が嗤ってる。
相手は長身だし、まあ、マスクは悪くない。
体重が平均より少し重いだけの...
「先輩、重すぎです」
抱えて分かったことは。
こいつ腹、出てる。
着痩せかよ......
◇
さて、テロリストと断定していい連中。
反政府活動家らの基本構成員は、大学生崩れの狂気に支配された者たちだ。
社会の理不尽のすべてが自分自身に向けられたものだと思っていて。
それらを取り除かない政府に人工島は預けられないと信じて疑わない連中。
もっと世界を見ろ。
お前らよりも不幸な人々は世界に、沢山いるんだよ――。
そう、言い聞かせても。
まあ、聞く耳を持たんだろう。
で、なければ狂化なんてアホなことになりえないか。
「この上だ!! 生きて捉えて引きずり回してやる!!!!」
大声だな。
非常階段にまで出たと見える。
ボクらが屋上に近い上階だから、4、5階は下からだろう。
「上がれ、上がれ! 駆け上がれ!!」
うんうん。
順調に駆け上がっているな。
そのまま気が付いてくれるなよ。
『このままで大丈夫なの?』
エサちゃんがPDWの銃口をボクの背中に刺してくれてるんだけど。
痛いです。
引き金を引き絞ったら、防弾チョッキのバックプレートに至近弾で白目向くと思うわ。
コップキラーみたいにライフル弾は使用していないので、2重にされた特殊鋼のプレートに窪みができるだけだ。が、それでもプロボクサーからボディブローを左右から貰ったような圧が身体にかかる。
死にはしないけど。
気絶は、するね。
間違いない。
「問題はない。もうすぐ...」
下階から激しい閃光が。
爆発は“ポン、ス”って抜けた音がした。
光の方は、下階の人影が天井まで一寸伸びたくらいだったし。
『な、なに、今の?!』
彼女は小声なんだけど。
なんか、気にしてる。