- C 1014話 アンダーグラウンド・ゼロ 4 -
ロリ本人は勢いが余って、付き人に抱えられてたのだけども。
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人工島の地下事情だが。
実際に建造着手から運用が開始されるまでに、途方もない時間が費やされた。
と、同時に高騰する資材費や、人命も含まれる。
完全に投棄されていなブロックが多少、残っていて。
政府当局からすると、破棄したものとみなしている区域なので。
当然、市民の保護範囲、適用外である。
当該地域に地上市民が『冒険だあー!』で突入しても、自業自得とされてしまう。
表向きは捜索は、されるけども。
リスクはリスクで処理される――人工島は、宇宙ステーションみたいな過酷な環境と同じなのだ。
身勝手な行動のせいで、多数の命が脅かされるとすれば。
市民の保護法がシビアなのも理解できるだろう。
◇
さて、地下世界は一種のダンジョンである。
中央区の制御ブロックだけが、安全が確保された地下施設を持つ。
それ以外の地下は――。
ビルディング建設時の足場のような関係性で。
かつては浮袋めいた役割だったり、資材搬入口だったり、あとは食料の生産工場だったりした。
巨大な鋼鉄製のブロックが横や縦に連結して。
僅かに配給される“空気”と“食料”で、地上では生活できない社会の弱者があった。
詳しい調査はされていないけども。
推計として約3万人との見積もりが、内務省に挙げられてた。
実際には大きく違ってて。
約3倍にまで膨れ上がっている。
働き手は勿論のこと、地上への強い憧れもあってマフィアへの加入率は高く。
また、死亡率も高い。
と、同時に種の存続めいた危機感が子供たちの両肩に乗って。
子供が子供を産む。
そんなカオスが地下にもあった。
「空気が薄すぎる」
地下へ入ると、激しい抵抗に遭うものと覚悟していた。
が、いざ踏み込んでみると。
無気力な老人たちの棲み処だった。
いや、瘦せ細っているだけの見た目で、老人っぽいだけ。
よく見れば欠損部位が目立つ、年若い連中だった。
栄養が、いあ、生活の改善が期待できる環境であれば、腕や足の欠損が腐る事も無かっただろう。
辛うじて生存のギリギリなラインにあるのは、最低限の生命活動による。
あるいは...
たまに訪れる子供たちが、水やパン屑を喰わせているからか。
『あ...』
掠れた声が漏れ聞こえた気がした。
隊員のひとりが不用心にも近づく――「俺にも、寝たきりの兄貴がいるんで...ほ」――腕を伸ばし、痩せた彼に膝をついたところで激しい閃光に飲み込まれた。鼓膜を破る激しい音、酸素マスクのバイザー越しにも見えた白い世界、そして炎。
薄い空気だから延焼には至らないけど。
バラバラになった肉塊と、細かく飛び散った骨がバトルユニフォームに突き刺さってた。
皮手袋で腕の白いつぶつぶを払いのければ、さっと落ちるけども。
よく訓練された兵士でも動転くらいはする。
或いは爆心地に僅かに近かった二人目の犠牲者の悲鳴か。
「お、おれのーぉ!!」
ああ、手首から先がない。
気が動転したバディは「あいつが、あいつが居ない、どこへ... どこへ?!」なんて探してるし。
「これ、まさか...歯茎、か?」
手袋に刺さった棘を見て卒倒してた。