- C 1010話 ヴィランフォース 5 -
武装した反政府運動家たちが、中央駐屯地へ向けて“手製”パイプロケット弾を投じてきた。
唐突かもしれないけど。
手引きした者もあったようで――
駐屯地が見えるホテル上階。
ボクらのフロア、東側の方で交戦が確認できた。
◇
反政府組織の中核メンバーは、自治政府の“働き方改革”による犠牲者で構成されている。
犠牲者って一括りにはしたけども。
不法移民だったり、不法入国だったり。
或いはビザ切れや留学、就労補助研修員だった者が法の網を、搔い潜って定着した者たちだ。
政府として自国の市民の雇用機会を護るために切ったのだが。
恨まれてしまったっぽい。
そうした勢力に。
最高学府に通う情弱な学生たちも参加して。
1960年代のような、荒れた雰囲気が燻ってたようで。
ヴィランフォースが焚きつけていないのに自主的に――『我らの戦友を護れーっ!!!』
捕縛されたイタリア系マフィアの奪還に動いたというわけだ。
しゅぽぽぽ~ん。
軽い発射音は小口径のパイプ砲だからだが。
破壊力の方は“手製”だからとバカには出来ない。
着弾と同時に弾頭の中にぎっしり詰め込まれてた、釘やネジにガラスの破片などが弾け飛ぶ。
両腕で顔を護った隊員たちの悲鳴。
駐屯地正門に鉄盾が降ろされた。
後門にも同じシールドが降り、モーターパークから装甲車が正門を固めて専守防衛に努める。
「――傭兵団へ」
営倉からホテルへ移動させたことも仇になったけど。
発煙筒と交互に放り込まれるパイプ爆弾が地味に効く。
「総員、武器を取れ!!」
司令のアナウンスに、
副官ら幹部の『まだ、長官からの許可が』って声が混じってて。
場の混乱がそこかしこに。
しゅぽぽぽ~ん。
再び、似た口径の砲弾が飛んできた。
放ってるトコでは耐久性に難のある擲弾筒の暴発が見えて、道行く通行人にけが人が出たり。
◇
ただね。
ボクらが宿泊してたホテルにも賊が入ってきたっぽく。
エントランスの従業員が銃口で脅されたのだろう。
政府に近しい重要な人物が、フロア貸し切りで宿泊してるって口走ったっぽい。
「エサちゃんを探してきて!!」
ハナちゃんは別件だし。
十恵ちゃんも。
ボクの他なら12、13人足らずの傭兵くらいか。
返却してもらったPDWと拳銃の残弾を確認。
「全員、装備を確認。エサちゃんを見つけたら屋上へ退く。通信兵は、友軍に救出を打診」
「了解!」
エサちゃんは案外あっさり見つけられたけど。
エレベーターや、非常階段から殺気が駄々洩れてて。
ちょっと洒落に成らないって感じで。